2024年に続いて、TEDxHamamatsu 2026「GLOW」が、西遠女子学園で開催されました。
今年は台風の接近もあり、中高生向けに企画されていたアクティビティが中止になったり、本校の生徒もボランティアとして参加できなかったりと、難しい運営判断もありました。
西遠では、2017年から学校としてTEDxHamamatsuの取り組みをサポートさせていただいています。大学ではなく、中高の学校でTEDxを開催することには、どのような意味があるのでしょうか。

有名な社会学者マックス・ウェーバーは、人の社会的行為を、その動機から四つの類型に整理しました。目標を達成するために最適な方法を考える「目的合理的行為」、自分が大切だと信じる価値そのものに従う「価値合理的行為」、長く続いてきた習慣に従う「伝統的行為」、そして感情や情熱によって動く「感情的行為」です。実際の人の行動は、このどれか一つだけで説明できるものではなく、いくつもの動機が重なり合っています。
学校生活にも、この四つの行為があります。試験や進路という目標に向かって努力することには「目的合理性」があります。長く受け継がれてきた行事や習慣には「伝統」があります。仲間と喜びや悔しさを共有し、夢中になって取り組むときには「感情」が動きます。そして、「これは大切だから取り組みたい」「私はこうありたい」という思いから行動するとき、そこには「価値合理性」があります。

以前から学園では、学校を「青春の道場」と捉えています。中高6年間、およそ「2000日の修行」の中で、勉強だけでなく、学校行事や部活動、友人との関係、失敗や葛藤を含むさまざまな経験を重ねながら、自分自身をつくっていく時間。その根底にあるのが「典雅・荘重」の校訓であり、現在の教育目標である「未来を拓く女性の育成」です。
しかし、「未来を拓く力」は、与えられた課題を上手にこなすことだけでは育ちません。自分は何を大切にするのかを考え、自分で選び、行動し、その結果を振り返りながら、再び次の行動を選択していく。その主体性こそ、これからの社会を生きるために必要な力だと考えています。
その力を生徒に身に付けてもらうために、学園では国際的な教育研究をもとに、過去の伝統を更新しながら「学びのデザイン」をつくってきました。

全国のTEDxに集う登壇者やボランティアの大人たちを見ていると、この「自らの価値から行動する」という姿を強く感じます。仕事や研究、地域活動など、それぞれの分野は違っても、「このアイデアを伝えたい」「こんな社会を実現したい」「誰かとこの価値を共有したい」という思いから、自ら時間と力を使っています。
イベントを実現するには、予算、スケジュール、役割分担など、目的合理的な運営も必要です。しかし、その根底には、損得だけでは説明できない、一人ひとりの価値や情熱があります。
だからこそ、中高の学校でTEDxを開催することに意味があるのだと思っています。
生徒たちには、ステージ上の登壇者だけでなく、その場をつくるために真剣に議論し、考え、動き回る大人たちの姿も見てほしい。「大人になるとは、与えられた仕事をこなすことだけではない」「自分が大切だと思うことのために、本気で行動している大人がいる」ということを、学校という日常の空間の中で感じてほしいと思います。
教育では、ともすると「何のために勉強するのか」「将来何になりたいのか」という問いに、進学や資格、職業といった具体的な「目標」を求めがちです。しかし、人を長く動かし続けるものは、目標だけではありません。
「私は何を大切にしたいのか」「何に心を動かされるのか」「何のためなら、自分の時間や力を使いたいと思えるのか」
そうした自分自身の内側から生まれる問いが、学びや行動への内発的な動機につながっていきます。

「2000日の修行」とは、決められた型をただ繰り返すことではありません。西遠が120年にわたり受け継いできたものに触れながら、その意味を自分自身で問い直し、自分の価値観を育て、次の時代に必要な行動へとつなげていく時間でもあるはずです。伝統を受け継ぐだけでなく、その価値を自分の中で捉え直し、新しい未来へつなぐ。そこに「伝統と創造」があります。
答えを教えるのではなく、まず「本気の大人」を生徒に見せる。その姿に驚き、憧れ、ときには違和感を持つことから、「では、自分はどう生きたいのだろう」という問いが生まれる。
これまでにも、TEDxHamamatsuに登壇されたスピーカーの方々や、運営に携わる方々に講演いただき、その影響を受けて変わっていく生徒をたくさん見てきました。TEDxという非日常が、「青春の道場」である学校の日常と交わることで、生徒一人ひとりの中に新しい問いが生まれる。その問いを持ち、「2000日の修行」の中で考え、行動し、自分なりの価値を見つけていくこと。それはまさに、自らの力で「未来を拓く女性」へと成長していく一つの契機になるのではないかと考えています。
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来週には、西遠の学園祭が開催されます。今年もオンラインでの発信を予定しています。
今度は、自分たちの「非日常」を、生徒、保護者、教員、そして地域の方々とどのようにつくり上げていくのか見守りたいと思います。
文責:岡本 忍


