懐かしのドラマ

我が家では毎週「NHKステラ」を取っています。
子供時代からずっと、我が家には「グラフNHK」という冊子が毎月届いていて、1月号の大河ドラマの配役一覧を見るのが大好きな子どもでした。
今も、「新平家物語」のそのページを鮮やかに思い出します。
十二単を着たきれいな女優さんが、ずらりと並んでいました。
新珠三千代さん、佐久間良子さん、五十嵐淳子さん、中村玉緒さんもいましたっけ。
平家一門の武将たちの名前を覚えながら、初めて歴史に興味を持った小学時代の私でした。
当時宝塚のトップスターだった古城都さんが「巴御前」で出演されたのも、よーく覚えています。
さて、月間の「グラフNHK」が、週刊の「NHKステラ」に変わったのは、平成になるかならないかの頃ではなかったでしょうか。(勝手な記憶)
ほとんど習慣として、我が家はこの雑誌を取り続け、現在に至っております。
途中、「ステラ大賞」なるエッセイコンテストに応募して、大賞をいただいたという有難い思い出もあります。
「放送と私」というテーマでのエッセイ募集の記事を見て、
「これなら書ける!」と思い、「夏休みの宿題」さながらに机に向かった夏でした。
「大河ドラマ」をテーマに書きました。
楽しい「宿題」でしたっけ。
大河ドラマへの愛着もさることながら、
私はNHKのいろんなドラマに思い入れがあります。
例えば、山田太一さんが手がけたNHKドラマはほぼ全編見ました。
中でも「男たちの旅路」シリーズは、再放送も欠かさず見ましたし、脚本集も買いました。
そして、幼い娘や息子にも見せましたので、我が家では時代も世代も越えて語れる番組です。
その「男たちの旅路」にもゲスト出演したことのある名優さんで「笠智衆(りゅうちしゅう)」さんという方がおられました。
すてきなおじいちゃまで、「男はつらいよ」の寅さんシリーズにも和尚さんとして出ていらした方です。
彼を主役に据えたドラマが3本、NHKで放映されたのは、1980年代でした。
年老いた男の人が主役のドラマ、これは当時画期的な事でした。
(今でもそんなドラマは少ないですね。)
「冬構え」
「ながらえば」
「今朝の秋」
この3部作は、放送史上に残る名作だと私は思っています。
そんな3本のドラマが、今年のステラで取り上げられたのです。

懐かしのドラマのいろんなシーンが次々に脳裏によみがえってきます。
「今朝の秋」の軽井沢の晩秋の美しい景色。
その中に佇む笠智衆と杉村春子。
息子ががんで余命いくばくもない、
そんな主人公が、別れた妻と再会して、
息子を病院から連れ出して…というストーリーでした。
「ながらえば」のクライマックスで、
入院中の奥様に向かって、主人公が泣きながら言う台詞、
「わしはおりたい。お前と、おりたい」
富山と名古屋に別れて住まなくてはならなくなった老夫婦の、
もしかしたら今生の別れかもしれない辛さがこの台詞に込められていました。
このドラマが作られたのは、高齢化社会と言われる以前の時代。
社会を見つめる山田太一さんの目の鋭さ、
人間を愛する彼ならではの、温かみのある台詞の数々。
「ステラ」のおかげで、古いドラマの変わることない感動が、心に温かくよみがえっています。
今のドラマは、視聴率ばかり気にして、軽きに流れている気がします。
視聴者に迎合するドラマは、
果たして10年先、20年先に振り返られるのかしら・・・。
古い上質のドラマを一斉に再放送したらいいのに、と思うのは、私ばかりでしょうか。