小さな白板2022 夏休み編その4

夏休み中も、図書館開館日にはそっと掲げている「小さな白板(ホワイトボード)」です。終戦の日の翌日からの週は、平和を考える俳句・短歌・そして言葉を特集しました。

8月16日(火)  十五日ひまわりの首垂れており     青山良子  

昨年(2021年)8月15日の終戦の日に、中日新聞「平和の俳句特集」で見つけた俳句です。作者は、70歳の青山良子さん。わずか17音の中に、夏と終戦と平和を祈る思いが全部詰まっていて、私は思わず書きとめました。1年後、こうして皆さんにこの一句を紹介しました。亡くなった方々、辛かった時代に対して、首を垂れているのはひまわりだけではないでしょう。人間は過ちを繰り返してはならない、そう思います。

8月17日(水)  手榴弾一個ばかりの命にて 語れぬ日々を兵士は生きたり   池田理代子

昨年出会った歌集「寂しき骨」より。池田理代子さんは、マンガ「ベルサイユのばら」の作者です。漫画家であり、声楽家であり、歌集まで出版…。オールマイティな池田さんに感服します。

戦争のさなか、兵士たちは、自決のために手榴弾を持ち、戦っていたといいます。手榴弾一個の命、重い言葉です。そして、戦争の最前線で闘っていた兵士たちは、語れないぐらい壮絶な、悲惨な体験をしているのでしょう。そうした想像力を持つことも、また戦後を生きる私たちの大事な使命だと思います。

8月18日(木)  切々と「翼をください」唄う人平和を願う翼はつよし   長澤ちづ

この一首に出会ったのは、「短歌研究」7月号でした。「翼はつよし」と題された30首の中から、「翼はつよし」と歌っているこの一首を選びました。(白板には「強し」と漢字表記してしまいました。すみません。)

白板には一首しか紹介できませんでしたが、同じコンサートを歌った短歌がこの短歌の前後にたくさんあります。「切々と」の前の三首も紹介します。

 畳みたる翼のようなパンドゥーラ母よ母よと奏でて已まぬ

 パンドゥーラの六十五弦に託せるは祖国への思い精神(こころ)の波動

 日本の楽曲「翼をください」を己がものとしうたう歌姫

「翼をください」を歌っているのは、ウクライナ出身の歌姫。母国の民族楽器「パンドゥーラ」という六十五弦の楽器を奏でながら、彼女は「翼をください」を日本語で歌いました。故郷を想い、数々の命や国土を想い、本当に翼が欲しいと思ったのではないでしょうか。

私もウクライナ出身のナターシャ・グジーさんの歌で「つばさをください」を聞いたことがあります。長澤ちづさんが聞いたのがナターシャさんかはわかりませんが、 その歌姫の心を、コンサート会場で長澤さんはどんな思いで受け止めたのだろう。・・・まるで歌姫の声が聞こえてくるような短歌に、私は心を揺さぶられました。 歌の力と、短歌の力。平和を願う思いがあふれています。

8月19日(金) 
私たちの世代、前の世代が過ちを犯した。若い世代は、そこから学べるようにならなくてはならない。どんな環境であれ、世界のどこであれ、広島や長崎のようなことを再び起こしてはいけないのだと。    アントニオ・グテーレス

国連事務総長のアントニオ・グテーレス氏は、今年広島での平和祈念式典に参列しました。来日してすぐのインタビューで、彼はこの白板の言葉を述べました。そして、8月6日、広島での挨拶は、国連の広報ページに掲載されています。ぜひ皆さん、お読みください。そして、若い世代の皆さん、どうか学んでください、再び過ちを起こさないために。

☆  ☆  ☆

今週の図書館は、25・26日に開館とのことです。夏休みラストスパートを迎える皆さんを、どんな白板で出迎えましょうか…。