今日は、長崎に原爆が投下された日です。10時45分からNHKで中継される「令和8年長崎平和祈念式典」を母と二人、居間のテレビで見守ろうと思います。
夏休みに入りましたが、図書館は、生徒や小中学生を迎える場として活躍、白板も更新しておりました。8月2日からのラインナップです。
8月2日(日)
坂本龍馬も登りたるとふ高千穂の峰夕空に澄みて聳ちたり
志垣澄幸

8月2日は第2回高校オープンスクールでした。施設見学で訪れる公立中学生の皆さんをお迎えする歌、そして8月最初の歌として、この一首を掲げました。坂本龍馬も登ったという高千穂の峰が、夕空の中にくっきりと聳(そび)え立つ姿が想像できるようです。九州で起きた大きな地震への想いも込めて書きました。
8月3日(月)
チェロは大地、ヴィオラは光、ヴァイオリンは高き低きにさへづるひばり
桑原正紀

桑原正紀さんの短歌は、本当に美しいなと思います。奏でられる楽器の音が、大地であり、光であり、その中でさえずるひばりである、という短歌に、音楽の荘厳さも、雄々しい自然の姿も想像することができ、しばしうっとりとしました。
8月4日(火)
夜汽車のよう、なんて思えば悪くないエアコンの音 眠りに落ちる
本条恵

暑さで寝苦しい夜が続いています。エアコンの音が気になる作者も、夜汽車のようだと思ったら、素敵な音に聞こえたのでしょう。眠りに落ちる幸せな安心感が漂う歌ですね。
気になる音も想像の仕方で感じ方が変わるかもしれません。
8月6日(木)
逆光の原爆ドームを背景に記念写真は撮らず ただ祈るのみ
黒岩剛仁

広島の原爆忌に、この短歌を書きました。原爆ドームを前にしたら、記念写真は撮れない、という作者の想いは、そのまま、先日見たドキュメンタリーに通じるものでした。原爆ドームが世界遺産になるまでの経緯を追ったNHKのドキュメンタリーの終盤、アメリカの代表として会議に出席したアメリカ人の方が、後日ヒロシマを訪ねた時、原爆ドームに圧倒されて、いつもならたくさん撮る写真を、ここでは数枚しか撮れなかったと述べたのが、この歌にも重なりました。原爆ドームには、来る者を圧倒するものがあるのです。物言わぬドームの存在意義がこの歌に現れています。
今回、NHKの番組で、原爆ドームの世界遺産認定(1995年)の文章には、アメリカの思惑もあって、「原爆の惨禍」ではなく「エネルギーが解き放たれた」という表現が用いられていることもとても複雑な思いを抱きました。
8月7日(金)
立秋のモンキアゲハよ うたかたの宇宙の粉をばら撒きながら
五島諭

8月7日、立秋です。もう秋なのですね。図書館たんけん講座の日の白板です。
モンキアゲハという小さな生き物に、宇宙という無限大のものを重ねた三十一文字。短歌は、そしてその短歌を作る人の心は、なんてダイナミックで繊細なのだろうと思いました。この短歌は、五島諭「緑の祠」より。図書館に設置された木下龍也図書の一冊です。

昨夜、「長崎の郵便配達」という映画を見ました。被爆者の谷口稜曄(すみてる)さんを取材したイギリス人のピーター・タウンゼンド元空軍大佐。その娘で女優のイザベル・タウンゼンドさんが、2018年8月、家族と共に長崎を訪ね、父の遺した著書や音声メモ(取材時の録音)を頼りに、父と谷口さんの想いを追っていくドキュメンタリー映画です。彼女が来日する前年の2017年8月30日に谷口さんは亡くなり、イザベルさんが彼のご自宅を訪ねた時、大きな精霊船がご自宅門前にありました。谷口さんと会いたかったと、仏前で涙するイザベルさん。そして、父の残した音声メモを再生しながら、父との思い出を辿る姿も印象的でした。原爆の被害に遭った人々への父娘の眼差しは、国を超えて、時代を超えて、平和への強い思いを伝えてくれました。谷口さんの人生も、この映画で辿ることができました。淡々とした映画でしたが、心に刻まれる思いがありました。

そろそろ、長崎平和祈念式典が始まります。

