小さな白板、第16週

夏休み突入直前、第16週の「小さな白板(ホワイトボード)」です。夏休み秒読みで、大人は何かとせわしない一週間(3日間)でした。

7月19日(月) なめらかにアナウンサーの言ひたるを反芻す「このころかかのなか」 花山多佳子

「このコロナ禍の中」という耳慣れた言い回しも、確かにひらがなにすると「早口言葉」のようです。話のプロであるアナウンサーたちはいとも簡単にこうした表現を発音し、私たちに伝えてくれますが、自分が言おうとするとなかなかすらっと言えない…。ただ、伝える中身を考えたら、「このコロナ禍の中」なんてさらりと言えるようになることにも抵抗を感じますね。昔、あるアナウンサーが「高速増殖炉もんじゅ」となめらかに言えず、言い直したニュースを思い出しました。

7月20日(火) きみに逢う以前のぼくに逢いたくて海へのバスに揺られていたり 永田和宏

夏を感じさせる、そして、なんだか切ない気持ちの短歌を。永田和宏さんは、朝日歌壇の選者で、いつもあたたかく優しく、そして社会に対して正義感を感じさせる歌を選ばれます。永田さんが選ぶ歌が、私にはいつも一番しっくりきます。

7月21日(水) 噴水が輝きながら立ちあがる見よ天を指す光の束よ  佐佐木幸綱

第14週の最後に用意していた短歌でした。噴水特集のフィナーレを飾るつもりでしたが、オオバ欠勤のため、ご紹介できませんでしたので、とびきり暑くて、明日から夏休み!というタイミングでご紹介しました。この歌に出会ったとき、噴水がとても荘厳な存在に思えました。今、外出がままならない時ではありますが、夜、イルミネーションと一体化して光の束と化す壮大な噴水を見上げられる時が、また早く戻りますように。

生徒の皆さんにとって、これをお読みの皆様にとって、健やかなる夏、そして素晴らしい夏休みとなりますように。