小さな白板2022 第27週

図書館入り口に掲げている「小さな白板(ホワイトボード)」、今週(11月14日~18日)は出張もあったので、全部で4枚です。今週はしばし短歌を離れて、詩や散文を特集してみました。

11月14日(月)
 わたしのすきなひとがしあわせであるといい 
 わたしをすきなひとがしあわせであるといい 
 わたしのきらいなひとがしあわせであるといい 
 わたしをきらいなひとがしあわせであるといい 
 きれいごとのはんぶんくらいが 
 そっくりそのまま 
 しんじつであるといい
          笹井宏之

笹井宏之さんは、若くして世を去った歌人です。優しくて透明な、やわらかくて、儚(はかな)くて、哀しげな短歌がたくさんあります。彼の心の中をそのまま映したような詩を、週明けのホワイトボードに綴りました。「赦す」という言葉を思い浮かべます。

11月15日(火)
誰かが、なん百万もの星のどれかに咲いている、たった一輪の花がすきだったら、その人は、そのたくさんの星をながめるだけで、しあわせになれるんだ。
     サン=テグジュペリ作 内藤濯 訳「星の王子さま」より

やっぱり「星の王子さま」は永遠の名作だなあと思います。パラパラとページをめくるたびに、心に何かをすうっと運んでくれる本です。この日は、この一文がすっと心に届きました。星空を見上げるだけで幸せな気持ちになれるのは、愛を知っている人なのです。
「星の王子さま」にまつわる最新のエピソードは、明日のブログに書きますね。

11月16日(水)
人間がその性格を際立って示すのは、何にもまして、彼が何をもって笑うべきことと見なすかによってである。   ゲーテ

ゲーテ 『親和力』 より。ギクリとさせられる言葉です。何をもって笑うべきものとするかが、その人の性格を際立たせる、と。笑いのレベルがその人となりを示す、と考えていいでしょう。下劣なものを笑うのか、人を馬鹿にして笑うのか、皮肉を笑いとするか、心温まる光景を見て笑うのか…。笑いはその人の性格を如実に表すものだと言えるでしょう。近頃のテレビ番組の笑いは、あまり品がいいとは言えません。特に、人を馬鹿にしたりだましたりして笑いを狙う番組が私は大嫌いです。チャップリンの映画がいいな、と思います。皆さんはどんな笑いが好きですか?

※そういえば大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の源仲章(生田斗真)の笑いがまあ腹立たしいこと…。都人(みやこびと)のいや~なところを全部持ってるような、それにしても生田斗真の演技がうますぎる…、と毎回呆れております。明日の大河で彼はどうなる…?

11月17日(木)・18日(金)
人が生まれて死んでいく。その尊さは世界中どこでも変わらないはずです。それを大切にし自分に出来ることをする。目の前に人が倒れていたら、どうしましたか、と声をかける。これに尽きると思いますね。     中村 哲

中村哲さんは、アフガニスタンで医師として現地の人々の命を救い、不毛の土地に水路を引いて水のある豊かな農地を作り上げた人です。2019年何者かの銃弾に倒れ、亡くなりました。あの時は本当に悔しくて悲しかったです。アフガニスタンの人々はみな涙を流したと言います。大統領が棺を担いだことも忘れられません。国葬に値すべき偉人でした。

10月13日のブログで「映画紹介」と題して、「荒野に希望の灯をともす」を紹介しました。シネマイーラではたった一週間の上映でしたが、何とか見に行くことができました。中村哲さんの行動力に改めて驚かされ、水路づくりが決して順調ではなかったことや、哲さんのご家族に不幸があったことなど、映画で初めて知ったことがたくさんありました。

彼の言葉はこれから少しずつ紹介したいなと思っています。この日白板に書いた「目の前に誰か倒れていたら」という問いも、前日のゲーテの「笑い」と同じように、私たちに突き付けられた問いのように私には思われました。私たちは果たして躊躇なく「大丈夫ですか?どうしましたか?」と声を掛けられるでしょうか。そんな勇気が果たしてあるのか。理由を付けてその場を逃げ出してしまうのではないか。自分に問いかけています。

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17・18日と静岡市で行われた私学協会の研修に参加しておりました。県内の私学各校から集った先生方と出会い、講師の方々のお話や先生方との交流でいろいろ学ばせていただきました。たくさんのヒントをこれからの学園に役立ててまいります。