戦争に関するテレビ番組を見て

8月には、戦争について扱った番組が多く放送される。しかし、終戦80年の節目の昨年に比べると、今年の戦争特集は少ないようにも思う。そんな中でも秀作はある。番組の作り手の熱意と時代への危機感とを感じる良い番組だ。
私は次の3本の番組を見た。

  1. 特集ドラマ「手塚治虫の戦争」(8月12日)
  2. NHKスペシャル「少女たちの戦争 時を超える学級日誌」(8月15日)
  3. NHKスペシャル「白い旗 水木しげると硫黄島」(8月16日)

手塚治虫(1928ー1989)、水木しげる(1922ー2015)という二人の漫画家がそれぞれどのように太平洋戦争を体験し、何を伝えようとしたのかを1と3の2つの番組は伝えていた。一方はドラマ、もう一方はドキュメンタリーとアニメーションを融合した番組だった。手塚治虫は会社の倒産という人生の危機の時に、一番書きたいものとして、自身の戦争体験を漫画にする。水木しげるは、自身も戦争で片腕を失ったが、硫黄島で日本軍の兵士が振ったという白旗の話を三度も作品化した。手塚と水木、二人とも、戦争のことを作品にすることに葛藤を抱えながら、しかし二度と戦争の時代を繰り返してはいけないという強い使命感に駆られて書き進めたのだろう。特に、硫黄島の白旗は、アメリカ軍の記録にも残っている実話である。凄惨な死闘の中で、部下を死なせたくないと考えて行動した一人の兵士がいたこと(彼は日本軍に撃たれて亡くなったそうだ)を、私は初めて知った。

私は、あまり漫画を読まないで育った人間だったので、戦争に関する漫画に触れたのは、里中満智子さんの「あした輝く」くらいであったが、今回、この二つの番組を視聴したことで、漫画家一人一人が戦争という大きな史実と向き合い、体験や聞き書きをどう作品化したのか(しなかったのかという選択も含めて)を改めて考える機会になった。戦争から81年が経った今、葛藤を抱えながらも戦争を伝えようとして行動してくれた漫画家たちに心から敬意を表したい。
手塚治虫のドラマは、8/30(日)午後3:30 よりNHKEテレで再放送されるとのこと。「白い旗」のNスぺは、20(木)午前0時35分(水曜深夜)にNHK総合で再放送、アニメ部分は後日改めて完全版が放映されるということである。

2の「少女たちの戦争」は、東洋英和女学院の生徒たちが戦時中の学級日誌と向き合うドキュメンタリーである。学級日誌を読む生徒たちは、日誌の記述を通して、戦争中の不自由さ、同調圧力、空襲や学校工場への動員の日々を知っていく。東洋英和の「英」の字は「永」の字に変わり、キリスト教をいったん捨てて、学校は存続した。そんな歴史を生徒たちに伝えていく東洋英和の先生方の平和教育への熱意を知り、同じ女子校の教員として胸が熱くなるとともに、当時の女生徒たちの苦難を知るごとに胸が苦しくなっていった。空襲で学校の周囲は焼け野原となり、生徒たちは罹災した友人や消息不明の友人を思いながらも、どんどん戦争に巻き込まれていく。中でも、東洋英和の生徒たちが召集令状(赤紙)の清書をさせられたことを知った時には、悔しくて悔しくて泣きそうになった。赤紙のあて名書きをした生徒の中には、級友の父親の名を書いた生徒もいたという。友人の父親が戦場に行く、その命令書を書くことになった少女の気持ちはいかばかりだっただろう。自身が書いた赤紙が無駄になってほしかった、と後になって思ったという女性の証言も紹介されたが、彼女たちは無意識のうちに戦争に加担してしまったわけである。戦争とは、こうした非情なことの連続なのだ、と逃げ場のない苦しさを感じさせる番組であった。

再放送が水曜深夜にあるとのこと、よかったら視聴してください。

今年の8月15日、「戦争反対」と表明する人々の多さは、昨年以上であった。全国戦没者追悼式では、天皇陛下の「反省」という言葉が重く重く響いた。同じ日、NHKの歌番組で森山良子さんの歌った「さとうきび畑」は、終戦の日にふさわしい鎮魂歌として胸に残った。

8月15日は、お盆でもある。戦争で亡くなられた方も、天寿を全うした方も、同じようにかけがえのない命を持っていた。命の重みを考え、二度と戦争を起こしてはならないという、当たり前の決意を、改めて心に刻んだ今年の8月15日であった。