衛星受信実験科学教室

秋休み2日目の10月11日(水)に、5年の物理選択者を中心に18名の生徒が参加して、静岡大学の内山秀樹先生による「衛星受信実験科学教室」が開かれました。実験助手として静岡大学の学生さんも3名参加してくれました。
はじめに、内山先生から「人工衛星とは?」「飛行機と人工衛星の違いは?」「人工衛星はなぜ地球に落ちて来ないのだろう?」というように、生徒への問いかけを中心とした講義がありました。最初は緊張していた生徒たちですが、内山先生の巧みな誘導とユーモラスな話術で、徐々にリラックスし、講義の内容に引き付けられて行きました。その中で、人工衛星は、秒速約8kmというとても速いスピードで運動しているので、地球を回り続けることができるのだということを学びました。

秒速約8kmというのは、地球を1時間半弱で1周してしまう速さです。本当にそんなに速く動いているのでしょうか? それを人工衛星から発信されている電波を受信することによって確認するのがこの科学教室の一番の目的です。
今回ターゲットにするのはイスタンブール工科大学で作られたキューブサットと呼ばれる超小型人工衛星で、1辺が10cm程度のサイコロ型をしています。人工衛星の電波を受信するには、その動きに合わせてアンテナを動かす必要があります。人工衛星の電波を受信することで、その瞬間の人工衛星の位置を確認することができるので、うまく電波を受信し続けられれば、その速さを実感することができます。


生徒たちは4つのグループに分かれ、アンテナ係,受信機係,記録係といった役割分担をし、内山先生や3人の実験助手のみなさんから機器の扱い方等を教えていただきました。その後、東館の屋上に上がり、まずリハーサルです。きれいな秋空が広がり、絶好のコンディションです。アマチュア無線の電波が飛び込んで来ることもありましたが、リハーサルは順調に進みました。

そして、いよいよ本番の時刻を迎えます。人工衛星は北から頭上を通過し南へと飛んで行きます。ターゲットとなる人工衛星が西遠の上空を通過する時刻とその方位,高度がまとめられた表に基づいて、記録係が方位と高度を指示します。アンテナ係がコンパスで方位を確認しながら指示された方位と高度にアンテナを合わせます。しばらくすると受信機から「ピーッ、ピッピッ」というような音が聞こえて来ました。人工衛星からの電波で送られてきたモールス信号です。アンテナの向きを刻々と変えながら、電波の受信を何度も試みます。その間、10分間ちょっとでしたが、何回も電波を捉えることができたグループ、数回捕らえることができたグループ、アマチュア無線しか捕らえられなかったグループ、というように明暗が分かれてしまいましたが、すごいスピードで人工衛星が頭上を飛び去っていったという実感を得ることができました。

講義の途中に休憩時間を兼ねて、静大生のみなさんとの座談会を行いました。大学生活や受験についてのいろいろなお話を楽しく聞くことができました。この座談会も含め、この日の科学教室は、生徒たちにとって、とても貴重な体験になりました。

文責 松山福太郎