こんな本に出会いました

「あの日からの或る日の絵とことば」という本に出会いました。帯には、「3・11と子どもの本の作家たち」とあります。

絵本編集者の筒井大介さんが、絵本作家の方々に、東日本大震災を巡る「或る日」のことを、文と絵で綴ってもらって作られた本です。32名の絵本作家の方々が絵や写真、そしてエッセイや詩を寄せています。2011年3月11日のことを綴ったものや、3月11日を思い起こさせる或る日のことを書いたものもあります。絵もお一人お一人全く違う作風ですが、それぞれ風情があって、絵の次のページのエッセイを読むともう一回絵のページに戻りたくなる、そんな本でした。

あの日、東日本大震災の大きな揺れをどこで体験し、どんなことを想ったのか。そして、その後、一人の絵本作家としてどんなことを考え、どんな作品を作ったのか。あの日からしばらく絵の描けなくなった方もいらっしゃいました。津波や原発事故、停電、そういうものを体験した方々の文章に、自分自身の3・11とそのあとの日々を想いました。浜松は、確かに揺れも東北や首都圏に比べれば大きくはなかったし、津波も来ませんでした。しかし、あの日を境に、何かが変わった。自分や家族の出来事を思い出すとき、3・11の前だったか後だったかをまず考えるようになりました。そういう自分の変化をもしかしたら普遍的にとらえようとして、私はこの本を読んでいるのかもしれません。

一番印象に残ったのは、牧野千穂さんという絵本作家の方の絵と文章でした。一羽のペンギンの寂しげな絵が気にかかり、どんな方だろうと調べてみたら、「羊と鋼の森」の表紙の絵を描かれた方でした。ペンギンの絵には、「世界中の哀しみを」という題名がつけられていました。

新型コロナウイルスという、震災とはまた違った非日常の中にあって、この2020年もまた、その前?その後?と思い出す日が来るのかもしれない。そういう時だからこそ、3・11という未曽有の災害をいま人々がどう心にとどめているのかを知りたい、そんな思いで、この本「あの日からの或る日の絵とことば」を読み返しています。