夏休み読書日記 その2

 今日は連続して読んだ2冊の本をご紹介します。2冊とも同じ著者の本です。

梨木香歩さんの「僕は、そして僕たちはどう生きるか」と「ほんとうのリーダーのみつけかた」という本です。

 「僕は、そして僕たちはどう生きるか」梨木香歩著(理論社 2011年4月初版)

 「ほんとうのリーダーのみつけかた」梨木香歩著(岩波書店 2020年7月10日発行)

梨木香歩さんは、生徒の皆さんなら「西の魔女が死んだ」でおなじみの作家ではないでしょうか。私の娘も彼女の作品が好きで本棚には何冊も梨木さんの本があります。私はというと今まであまり彼女の本は読んでいませんでしたが、この夏は、新刊で紹介されていた「ほんとうのリーダーのみつけかた」(写真右)をなんとなくぽちっと予約して購入して読み、そこに書かれていた「僕は、そして僕たちはどう生きるか」の本も続いてぽちっと取り寄せることになりました。

「ほんとうのリーダーのみつけかた」は、梨木さんが、若い世代向けに書いた、というか講演したものを書籍化したものです。2015年の彼女の講演は、「僕は、そして僕たちはどう生きるか」の文庫化を記念して行われたのだそうです。肩ひじ張ったリーダー論ではありません。自分との向き合い方を若い世代に教えてくれる本です。

「同調圧力に屈するのは、自分自身の中にリーダーを持っていないから」「自分はどうすべきかをいつも考える自分がいないといけない」という言葉の根底にあるのは、戦前に書かれた「君たちはどう生きるか」(吉野源三郎著)が彼女の根底にあったからでしょう。梨木さんは、「君たちはどう生きるか?」という吉野さんの問いかけをずっと心の中に刻み、彼から受け取ったものを、今度は若い読者へと引き継ごうとしている――そのことがこの本から分かりました。

そこでもう一冊「僕は、そして僕たちはどう生きるか」につながります。この本の主人公はコペル君です。叔父さんも出てきます。「君たちはどう生きるか」のアンサー小説だと思います。

「僕は、そして僕たちはどう生きるか」には、不登校の友人やオーストラリアから日本に来た若者まで登場し、「君たちは…」の時代から70年以上たった、21世紀の「僕たち」が「どう生きるか」が書かれていました。戦争、自然破壊、文化、教育、性、そして命・・・少年少女の置かれた現代の諸問題をさらりと導入しながら、主人公の少年が自分の知らなかったこと・気づかなかったことを知り、ある時にはショックで傷つきもしながら、成長していきます。自分自身と向き合う大切さも教えてくれ、最後は読む者を明るい気持ちにさせてくれます。読み終わってからもう5日経ちますが、今もふっとこの本の一場面が甦る瞬間があります。本の世界の余韻に浸ることのできる一冊として、ぜひ生徒の皆さんに読んでほしいと思いました。

ちなみに、「君たちはどう生きるか」と吉野源三郎さんに問われ、答えを出そうとした作家は、梨木さんだけではありません。高橋源一郎さんの「ぼくたちはこの国をこんなふうに愛することに決めた」(集英社新書 2017年12月発行)も、そうした1冊です。あとがきを見ると、「君たちはどう生きるか」が爆発的に売れている、宮崎駿さんもこの題名で絵に目をつくっているらしいというニュースを知り驚いた源ちゃん (高橋源一郎さんのことを皆親しみを込めてこう呼ぶ) が「だって、『ぼくたちはこの国をこんなふうに愛することに決めた』は、21世紀版の『君たちはどう生きるか』を目指して書かれたものだったから」と説明しているのです。吉野さんからの「宿題」を70年以上たってみんながそれぞれ提出しているようにも感じられますね。

たくさんの読者に影響を与えた吉野氏の「君たちはどう生きるか」、その読者世代が今度は次世代へと「どう生きるか」を新たに示す。――こうした継承こそが文壇の心意気であり、使命なのでしょう。皆さんも、そんな継承者の一人になりませんか?

「読書日記」、夏休み中にもうちょっと書けるかな?