赤羽末吉展へ

先日、静岡市美術館まで出かけてきました。

秋休み唯一の遠出となりそうですが、台風襲来の前にと出掛けてきたのでした。静岡市美術館は、新幹線を降りて、傘をさすことなく行き着くことのできる美術館です。事前にウェブ予約で入館時間を申請し、待ち時間なく入ることができるシステムがとられているのですが、ウィークデーのありがたさ、予約より早い時間に到着してもすんなり入場することができました。

葵タワーの地下からのエスカレーターを3階へ。静岡市美術館の入り口です。

「スーホの白い馬」の哀愁漂う絵で知られる赤羽末吉さんの人生をたどる展覧会、数々の絵本の原画やスケッチ、写真など、見応えいっぱいの空間でした。ウィークデーの昼下がり、人けの少ない美術館で、一つ一つの絵と真剣に向き合っていたら、くたくたになってしまいました。気づいたら90分が過ぎていました。

おへそがえる ごん。鳥獣戯画を思わせる絵です。上の写真の白い垂れ幕の裏に描かれていました。

私は、小学2年生の国語の教科書で「スーホの白い馬」に出会いました。スーホと白い馬との出会いや絆、信頼、そして、風のように疾走する白い馬の躍動感、王様の理不尽な要求、屈しなかった白い馬の崇高な精神…すべてが心を打ち、私にとって忘れられない教材の一つになりました。哀切な馬頭琴のメロディーが聞こえてきそうな挿し絵の数々と共に…。

「スーホの白い馬」は実に長い間、小学国語の教材として子どもたちの心を揺さぶってきました。私も、妹や弟も、そして私の娘や息子も、同じ物語に出会いました。同じ作品に学校で親子して出会う、同じ教材を親子で学ぶという経験は、奇跡に近いことなのではないか、と今回美術館で思いました。なぜなら、この「スーホの白い馬」が小学校の教科書に載ったのは1968年の光村図書出版とあったからです。1961年生まれの私が小学校に入学し、スーホに出会うことができたのは、おそらくその出版社の新しい教材の詰まった教科書の初年度か2年目の年にあたるのです。浜松市の教科書が光村でなかったら出会えていないこと。そして、現在、「スーホの白い馬」を他の画家の絵で掲載している教科書もあるのです。だとしたら、親子して同じ物語を同じ挿し絵で教わることができたことは、奇跡と言っても過言ではないでしょう。

「スーホの白い馬」が最初に「こどものとも」から発表されたのが1961年。私と同い年なのも、なんだか縁を感じました。

今回、「かさじぞう」「ももたろう」「つるにょうぼう」「だいくとおにろく」など、絵本の魅力がたっぷり詰まった空間に身を置き、至福の時を過ごすことができました。心にたくさん栄養をもらった気がします。

「赤羽末吉展」は静岡市美術館で来月11月29日まで開催されています。皆様も、「芸術の秋」に出会いに、ぜひお出かけください。