西遠の「くるみボタン」

西遠の制服は、冬服も夏服も、胸元にネクタイやリボンのついていないセーラー服です。胸元には、4つのくるみボタン。この「紺の布でくるんだ『くるみボタン』」のことを今日はご紹介しましょう。

5月11日に行われた殉難学徒慰霊式。この慰霊式を前にして、高校生徒会は機関誌「up date」第2号で西遠の戦争の歴史と平和を考えました。

そして、そこに、「西遠の制服にネクタイやリボンがない理由」という文章を載せたのでした。

くるみボタンについては、西遠公式ホームページの「戦後70年—西遠の記憶」の中に、こんなお話が登場します。

吉田:昭和18年に2年生になって、何月ごろでしたか、ある時、運動場にみんな並んだ時に、内田先生が「ネクタイを変えなければいけない」と説明してくださってね、昔は制服に黒いネクタイをしていたんですが、その時にネクタイが廃止になって、現在のボタン式(※くるみボタン)になったんです。

             「学徒動員の戦争体験」より 吉田安子(旧姓:金原)様のお話

生徒会の機関誌発行から1週間後、ゴールデンウィークが明けた5月8日の講堂朝会で、私もまた「戦争と平和」をテーマとして、制服のくるみボタンの誕生についてもお話しました。くるみボタンのいわれを知らなかった生徒が多く、たくさんの驚きの声が感想に綴られていました。

  • 一番印象に残ったのは、西遠の制服のくるみボタンは、戦時中に贅沢品として取られたスカーフの代わりという話です。この四年間全く聞いたことがなく、とても驚きました。正直私は、制服のくるみボタンが他の学校とは違って可愛くないしダサいし、あまり好きではありませんでした。でも今日の話を聞いて、そうやって思っていた自分が恥ずかしく思ったし、戦時中の西遠の先輩たちのことを考え、心が痛くなりました。(高校1年生)
  • 私が今回の講堂集会で特に印象に残っているお話は、制服のくるみボタンについてです。このくるみボタンは、私が西遠に入りたいと思ったきっかけのひとつでもあり、とても気に入っています。しかしなぜ他の学校のようなスカーフではなく、くるみボタンにしているのかは、最近機関紙を読んで知りました。私は今まで、戦争のせいでお金がなくてスカーフを買えなかったなんて、思いもしなかったので、初めて聞いたときはとても衝撃を受けました。また、それと同時に、戦争時の貧しくてつらい思いを忘れてはいけないという思いから、昔からずっと変わらずに同じ制服のままなのだろうと納得しました。そしてこれからも、変えてはいけないと思っています。なぜなら西遠の先輩方には、戦争を経験している人もいて、その中には亡くなってしまった方も、たくさんいるからです。その方たちのためにも、くるみボタンは決してなくすべきではないと思います。 (高校1年生)
  • 西遠の生徒の象徴であるくるみボタンには平和を願う気持ちが込められていると今回の講堂朝会で初めて知りました。今まで気にしたことがなかったのでとても驚きました。西遠の制服はここらへんではあまり見かけないデザインだなとしか思っていなかったのですが、制服に込められた思いを知ることができたので、これからは西遠の制服を誇りに思って着ることができるなと思いました。(高校1年生)
  • 高校まで西遠の制服はただただ「変わった制服だな」、という感情しか抱いてませんでした。ほとんどの学校、セーラー服を制服として使用している学校では、スカーフが制服の中に組み込まれていないことは非常に珍しいので、何かしらの意図はあるのだろうとは思っていました。しかし、それにまさか戦争が関与しているとは思ってもみませんでした。改めて、西遠学園全体が戦争という悲劇を忘れずに、その経験を糧にして命の尊さを学んでいるのだと感じました。私としても、この知識を得たことは今後戦争について考えざるを得ないきっかけのようなものになりましたので、この感情を忘れずに学んでいきたいと思いました。(高校1年生)
  • 私はこの制服を着てもう四年目になります。初めてこの制服に腕を通したとき一番最初に目に止まったのは黄色いラインでした。しかし、頭を下げたとき目の前に見えるのは4つのくるみボタンです。この四年間ずっと疑問に思っていました。他の中学生はスカーフがあったりするのになんで西遠はないんだろうと。でも、今回のお話でその謎が解けたような気がします。「くるみボタン」とは戦争中の絹の代わりとしてデザインされたものだということです。私はこのお話を聞いて感動したと同時に西遠のこの制服に誇りをもつことができました。とても素晴らしい歴史と文化だと思います。(高校1年生)
  • 今日のお話で5月7日(金)の中日新聞に載っていた、西遠についての記事を聞いた時、改めて、西遠生であることに誇りを感じました。また、当時の名残で制服にスカーフがなく、くるみボタンがあることにも、奥深い意味があって素敵だと思いました。以前、家の近くの大きな病院の前を歩いていた制服姿の私を見かけた年配の女性の方が、「あなた西遠生?」と声をかけ、「私も西遠生だったのよ。その制服懐かしいわぁ。素敵な学校よね!」と笑顔で話して下さり、その方と会話した3分間は、私にとって、とても素敵な時間であり、とても嬉しかったです。このような出来事と出会えたのは、この歴史ある黄色のラインの制服のおかげだなと感じました。(高校2年生)
  • 今自分たちが今着ている制服のくるみボタンに平和への祈りが込められていると思うとこの制服のデザインって歴史があるだけでなくすごく大事な意味があったんだな、ということが深く感じられました。 (高校2年生)
  • 制服のくるみボタンの意味を知って驚きました。6年間ずっと同じ制服を着ていても、ボタンについて詳しく考えることがありませんでした。正直、「リボンかわいいのに何でないんだ?」と思うこともありましたが、「伝統のある制服だからだ」と思うことで片づけていました。ですが、今回、戦争当時、絹は貴重であり、他のものに使わなくてはいけなかったことでリボンが無くなったと知って、驚くと共に、くるみボタンを大切にしようと思うことができました。戦争のことを忘れないためにずっと残されてきたくるみボタンは、私たちにとって大切なものであり、また一段と制服に愛着がわいたと共に、もっと多くの人にくるみボタンの意味について知ってもらいたいなと思いました。(高校3年生)

西遠の制服の「黄色いライン」と共に大きな特徴である「くるみボタン」について、今まで気にも留めず着用していた生徒たち。中には、どうしてリボンがないのか不満もあったようですね。今回、生徒会の機関紙や、中日新聞さんの記事、そしてそれを読み上げた講堂朝会での訓話を通じて、生徒の多くは初めてその誕生の秘密を知りました。戦争中にこのくるみボタンが生まれたことを知り、くるみボタンへの愛着を感じ、今着ている制服のデザインに誇りを感じてくれました。そして、西遠の制服が戦争中のデザインを今も受け継いでいることに、平和へのメッセージを受け止めた生徒たちでした。

この「くるみボタンの制服」には、はやりすたりを超越した大きな意味があります。この制服をこれからも皆で大事にしていきたいと思います。