小さな白板2023 第21週

体育大会に始まり、中学オープンスクールまで、第21週の「小さな白板(ホワイトボード)」を振り返ります。

6月5日(月)
赤と黄のランタナ咲けり六月の綿のやうなる日差しを受けて   栗木京子

ようやく晴れて体育大会が開催された5日。日差しを感じる短歌にしました。
「綿のやうなる日差し」を受けるランタナの花、西遠でも咲き始めています。外来生物なので、その繁茂力が日本古来の植物たちに脅威を与えています。西遠でも、駆除されては次の年、また咲きます。生態系を変えてしまう植物だけれど、このまあるい小さな花の2色は、何とも言われぬかわいらしさを感じさせますね。

6月6日(火)
チョコチップクッキー食べて少しずつマイナス思考のネジ緩みだす   松田わこ

甘いものを口に含むと、思考回路もだんだんとプラスの方向に歩み始めるのかもしれません。チョコチップクッキーでマイナス思考のネジが緩む、という表現が楽しいなと思って、体育大会後の長い一週間を歩む生徒の皆さんに紹介しました。

6月7日(水)
脱走した犬を探して妹と散歩コースを2周してきた  小坂井大輔

「小さな白板」に久々にワンちゃん登場。「脱走した犬」と言うと、我が家の歴代ワンちゃんを思い出します。特に、「リッティー」という白いわんこは、よく脱走しました。それでいて、帰れなくなって、私たちが探し出すのを待っていました。リッティーの場合、だいたいが、直前に散歩に行った先にいたのですが、この作者と妹さんはそこを二周もして探し回って、大変だったでしょうね。でも、きっとこの後見つかったから、こんな短歌も発表できたのだろうなあと、犬を飼うご家庭の小さな事件を想像しました。

6月8日(木)
学校で育ちし二匹アサギマダラ声援送られ高く翔び発つ  松下初恵

朝日歌壇2023年6月4日に掲載されていた短歌です。小学生たちの歓声が聞こえてきそうな、希望溢れる短歌ですね。子どもたちに育てられたアサギマダラ2匹が、どうぞ自然界で生き抜けますように、と祈らずにはいられません。

6月9日(金)
花束になれば渡していたような嬉しさがこちらにもあります。   吉田恭大

「現代短歌パスポート」という本の中で出会った短歌です。 五七五七七とはちょっと外れた調子、しかも句点があって、こうして白板に書くと、普通の文みたいですが、でも、何だかほっと心があたたかくなるような短歌ですよね。心に芽生えた嬉しさを伝えたい思い、じわっと来ます。

6月10日(土)
ジョバンニとカムパネルラと王子さま車窓から手をちいさく振って  天野慶

オープンスクールの「校内ウォークラリー」で図書館を訪れる小学生の皆さんへのウェルカムボードです。ジョバンニ、カムパネルラは、「銀河鉄道の夜」の登場人物。そして、「王子さま」は「星の王子さま」の主人公です。小学生の皆さんの中には、すでにこの名作2作品を読んだことがある人もいるのではないかな、と思い、この短歌を書きました。

作者が閉園間近の箱根「星の王子さまミュージアム」を訪ねて詠んだ短歌には、子どもにも大人にもたくさんの夢や教訓までも伝える名作「星の王子さま」への思いがあふれていました。私も昨秋訪れたことを思い出し、閉園したミュージアムへの思いを共有した次第です。王子さまも一緒に「銀河鉄道」に乗っているとしたら、孤独な王子さまにお友達が新たにできたようで、何だかほっとします。読者たちに手を振ってくれているのかなあ。