今年はたくさんの著名な方がこの世を去り、そのたびにショックや喪失感を抱いてきました。中でも、詩人の谷川俊太郎さんの訃報は、心にぽっかりと穴が開くような思いを感じる、大きな出来事でした。彼の死は、生徒たちの心にも大きな衝撃を与えたのでした。12月14日の講堂朝会では、「人権」をテーマに、谷川俊太郎さんの遺した様々なメッセージを紹介しました。その訓話への生徒の感想をご紹介します。

今回の講堂朝会で紹介された本で、谷川俊太郎さんの『へいわとせんそう』の本はとても印象が強かったです。簡潔なイラストと短い言葉で、とても考えさせられる絵本でした。平和のときと戦争のときの人の顔や町の姿などが比べていて、最後の「みかたのあかちゃん」と「てきのあかちゃん」では全く同じあかちゃんかが書かれていて、てきのあかちゃんだからといって羽などがついてはいないしあかちゃんに向けての感情はどの子も一緒だと思うけれど大人になってくとどんどん差別が大きくなってしまうんだなと思って 世界は怖いなと思いました。(中学2年)

私は、今回、谷川俊太郎さんが海外の絵本を翻訳していたことを知りました。誰もが知っているスイミーから、私が幼稚園の頃大好きだったフレデリック。そんな大勢の人が知っているであろう絵本の翻訳を担っていた事を知り、とても驚きました。谷川俊太郎さんがくれたプレゼントを忘れず生活していきたいです。(高校1年)

谷川俊太郎さんが亡くなったことは衝撃的でした。小学校のころ、授業でも谷川俊太郎さんの作品を読んだりはしましたが、校長先生が紹介されていた「やさしい日本語で読む世界人権宣言」を初めてきちんと読みました。法律や宣言などは誰にでもわかるようでなくてはならないのに、堅苦しい言葉で書かれていることが多いです。私にはそのような堅苦しい言葉で書かれた文がどうしても高圧的に思えて、どことなく苦手でした。ですが、「やさしい日本語で読む世界人権宣言」を読んでみると、谷川さんの性格もあるのか優しく手を差し伸べてくれているかのようなイメージが湧きました。私が一番印象に残ったのは「差別はいやだ」と訳された第二条です。人間は集団の中の違うものを仲間外れにしようとする性質があります。そのようなことは絶対にしてはいけないので、子どもには差別はだめだと教えなければなりませんが、どうしても難しく伝わらないこともあると思います。そこでこの第二条なのですが、差別は「ダメ」ではなく、「いや」と書かれています。これは相手の立場になって物事を考えようというのを提唱しているように思えます。差別をしないというのはなかなか難しいですが、実際に差別される側の立場になって考えたらいやだと感じることができます。このように「ダメ」、「いけない」ばかりを言うのではなく、促すような優しい口調で訳されているのは谷川さんの性格が出ているのかなと思いました。(高校2年)

谷川俊太郎さんは、私自身にとっても小学生時代から親しんできたこともあり、いつかこの世界からどこかに旅立ってしまうことは予期してはいたものの、訃報を聞いてから寂しい思いがしてなりません。「短歌研究」2025年1・2月号にも、谷川さんの訃報を受けた短歌が掲載されていました。
谷川俊太郎のたましひぐんぐん遠ざかるおほきな空をなほ孕(はら)みつつ
米川千嘉子
多くの人々に喪失感を抱かせ、谷川さんは宇宙に…。でも、谷川さんの願いを受け止めた若者は、西遠にもたくさんいます。若い世代の心にしっかりと谷川さんのメッセージが引き継がれていることを私は信じています。
