紅葉の便りも頻繁になり、どこか旅に誘われている感じの週でした。というわけで、「小さな白板」第42週のキーワードは「旅」です。
11月17日(月)
青い海だけじゃないよと雨降らす旅のはじめの石垣島は
俵 万智

俵万智さんはかつて暮らしていた石垣島を再訪。雨に出迎えられたのですね。あいにくの雨にも、石垣島訪問の喜びが伝わってきます。息子さんをおおらかに育ててくれた島だからでしょうか。
11月18日(火)
このあたりからか描いたのだらうか広重の旅人も見し富士見ゆるなり
永田和宏

作者の永田さんは東海道を踏破したことがあります。昔の人々の旅を味わう、感慨深い旅だったのでしょう。富士山を見るとき、「東海道中五十三次」を書いた浮世絵師の歌川広重や、その絵に描かれた旅人、そして実際に東海道を歩いて旅した人々に思いをはせているのではないでしょうか。
11月18日(水)
干していた傘が飛んでく青空の日にも旅してみたかったのね
紡ちさと

風で飛んで行ってしまった傘。旅に出たかったのか、と納得する作者の優しさとあたたかさを感じます。雨の日にしか活躍できない傘が青空の広がるなかでも旅してみたかったのだ、と考えると、何だかこちらまでワクワクしてきます。東京新聞掲載の東京歌壇2025年11月16日の作品です。ご本人のツイートで知りました。
11月19日(木)
つめたいほうがおいしいお弁当がある 代々木公園の真ん中へ行く
永井 祐

この短歌を見つけたのは、2022年です。ということは、コロナ禍の真っ最中ですね。冷たいけどおいしいお弁当をもって、代々木公園に向かう作者は、決して隅っこで小さくなってお弁当を食べるのではありません。「代々木公園の真ん中」で堂々と昼食タイムを始める作者の振る舞いに、コロナに負けない意志の強さを感じました。
11月21日(金)
北へ行く列車に乗る人駅ごとに丸みを帯びてトロントに冬
堀千賀

朝日歌壇2006年12月18日掲載の作品です。トロントはカナダの都市です。冬の到来を、電車に乗ってくる人々の服装に感じるという作者。その観察力に驚かされると同時に、トロントの生活への愛着を感じます。かつてトロントに住んでいた卒業生の言葉を思い出します。「先生、トロントってすごく地下街が発展してるの。どうしてかなあと思ったら、冬が来て分かった!寒いし、雪が降るから、地上の生活、無理だもん!」寒さ厳しい土地なのです。
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本日、遠鉄百貨店にて〈私立高校合同フェア〉が行われました。西遠ブースをお尋ねくださいました皆様、ありがとうございました!

次は、11月29日・12月14日の入試説明会でお目にかかりたいです!

