思い出したい言葉

新しい週が始まりました。
今週は、新年度最初の定期試験の週です。
今日は登校時の生徒たち、お疲れモードなのか、はたまた、不機嫌モードなのか・・・、挨拶の声が大変小さく、中にはグタンとした様子の人も見受けられました。
1年生は定期試験という未知のバケモノに、かなり緊張や恐怖を抱いているかもしれません。
1年生でなくても、テスト前はナーバスですよね。
テスト範囲を全部見直せなくて焦ったり、「部活もあるし、再診断もあるし、もういやだー!」という投げやりモードの人もいるのかな。
イライラ、ため息…そんな時、思い出したい言葉があります。
2010年に亡くなった歌人 河野裕子(かわのゆうこ)さんの
「まず目の前の茶碗を洗うんだよ」
という言葉です。
河野さんのご一家は、皆さん歌人です。
夫は、細胞生物学者でもあり、歌人として朝日新聞などで選者を務めていらっしゃる永田和宏さん、
息子の永田淳さんは、歌人で、出版社の代表も務めていらっしゃいます。
さらに、娘の永田紅さんも、生化学研究者であり、歌人。
河野裕子さんは、大学生のころから短歌を作り続け、永田氏と結婚後は家族や日常生活を題材にした短歌を多く残されました。
 たったこれだけの家族であるよ子を2人あひだにおきて山道のぼる
 手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が
闘病の末に亡くなる直前まで、裕子さんは短歌を作り続けたそうです。
そんな裕子さんが、ある時、暗い顔をしていた息子の淳さんに贈った言葉が、
「まず目の前の茶碗を洗うんだよ」
なのだそうです。
家事をこなしながら、原稿を書き、選歌をし、膨大な仕事をこなしていたであろう裕子さん。
焦りやイライラが募ることもあったでしょう。
そんな時、「まず目の前の茶碗を洗う」
つまり、
目の前にある小さなことから始めることが大事・・・。
裕子さんは明るく激励するようにこの言葉を言ったのだと、
息子の淳さんは回想しています。
私も時々、「目の前の茶碗を洗う」と呪文のように唱えてみます。
すると、やるべき「小さなこと」が見えてきます。
河野裕子さんという女性は、間違いなく、みずみずしい感性を持った歌人であると同時に、生活力を備えた主婦であり、優しく子供を包む母であったのだと思います。
「目の前の茶碗を洗う」
・・・皆さんも、焦った時に、そっと呟いてみてください。