小さな白板2022 第3週

図書館入り口に置いた「小さな白板(ホワイトボード)」、今年度第3週(4月18日から23日)のラインナップをご報告します。

4月18日(月)  むかし在りしれんげ畑を今は見ず文語の歌もかく滅びむか   高野公彦

高野公彦さんの「水の自画像」より。れんげ畑に文語の短歌。確かに頻繁に見られるものではなくなりました。

わかりやすい短歌、親しみやすい短歌と一線を画すように、厳然と歴史の光を放つ「文語の歌」があります。文語を使いこなすことは難しくても、いつまでも鑑賞はしていたい。滅びてほしくないものです。

れんげ畑も本当に見なくなりました。私が好きなれんげ畑は、篠ケ瀬町かな天竜川町かな、よく愛犬を連れて行った動物病院の曲がり角にありましたが、動物病院が移転してからあまりその角を曲がらなくなって、いつだったでしょうか、春その角を車で通りかかった時、れんげ畑がないことに気づきました。今も時おりその角を通るとき、れんげ畑のなくなったことを寂しく思います。そんなふうに「文語の歌」も滅びてしまうのか、滅びてしまったのか…。

この短歌を16日の土曜放課後遅くに白板にしたためました(いつも前日・または前週に次の歌を清書しています)。週が明け、18日に校長室の「誕生花日めくり」をめくると、なんと18日の花がれんげ草だったのでした。偶然の一致に嬉しくなりました。ここには滅びていないれんげの花がありました、きっと文語の歌も滅びない!と信じてます。

4月19日(火) 
夢を見て、心から「楽しい」「意味がある」と思えることを続ける先にこそ、世界があるし、その中でのトップがある           佐藤琢磨

佐藤琢磨は、レーシングドライバーです。2017年と2020年のインディ500で優勝した選手、と言っても、10代女子にはなじみが薄いかもしれませんが、自動車の「世界三大レース」(F1モナコグランプリ・世界耐久選手権のル・マン24時間レース、そしてインディーカーシリーズのインディ500)の一つ「インディ500」で2回も優勝した現役日本人ドライバーですから、ぜひ名前とこの言葉を覚えておいてください。

世界のトップを2回も経験した選手の言葉を、自動車レースが大好きな我が息子の誕生日にしたためさせてもらいました!横に載せたレース写真は2006年のF1日本グランプリ、スーパーアグリチームで疾走する佐藤琢磨選手です(たぶん。ヘルメットのデザインから推定。合ってますか?)。我が家のHDDのフォルダーにありましたので、息子もしくは息子にF1の魅力を教えた弟が撮影したものだと推測されます。

車には詳しくないのに、弟と息子のせいでF1ファン・琢磨ファンになってしまったオオバ、鈴鹿でのF1日本グランプリには2度出掛け、生の佐藤琢磨選手とその走りを見ました。2002年10月13日の日記には「灼熱のB2スタンドにて佐藤琢磨の応援、甲斐あって初入賞5位‼」と興奮気味な記述が。20年前ですねー、若い(笑)。2004年は台風一過の鈴鹿で4位入賞を見届けました。

彼がF1からインディーカーシリーズへと戦いの場を変え、彼の信条「No attack, No chance」を日々実践して遂にインディ500の優勝者となったことは、本当に嬉しく誇らしいものでした。東日本大震災の後、東北の人々に心を寄せ、積極的に復興支援に携わったこともあり、私は彼の姿勢を尊敬しています。

4月20日(水) 
消しゴムは字を書きたくてしょうがないえんぴつは字を消したくてしょうがないのに 
               沖島一平〔県立名護高等学校〕

     第17回 与謝野晶子短歌文学賞 青春の短歌 北九州市立文学館賞

若い世代の短歌には、みずみずしさを感じます。消しゴムもえんぴつも、ないものねだりをしているのかな。それは、自分にないものを持っている誰かをうらやむ人の心に似ていますね。ホントは本人のいいところを、誰かがうらやんでいるのに。

4月21日(木) 
 一杯の水さはやかに呑みくだし、咽喉(のど)すがすがし。我は歌はむ  岡野弘彦

「短歌研究2022年4月号」に岡野弘彦さんの短歌が掲載されていました。岡野さんは1924年〈大正13年〉生まれ、御年97歳! 短歌界の重鎮中の重鎮です。歌会始の選者も長く務められています。100歳近い岡野さんのエネルギーに満ちた、この前向きな一首に、60代のオオバ、背筋が伸びる思いがしました。若さは実年齢じゃなく、精神から来ますね。見習います。

4月22日(金) 「妬(ねた)まないこと」は知性の証   斉藤孝
                『人生の武器になる「超」勉強力』より

誰かをうらやましく思って「妬み」の心が巣食ったら、この言葉を思い出しましょう。「妬まないこと」が「知性」の証です。知性があれば、人を妬んだりしないのです。だから、知性をちゃんと育てなくてはいけません。心に刻んでいる言葉です。

4月23日(土) よく笑ふ親の子供はよく笑ふなんでもなくてしあはせなこと  大松達知

PTA総会の日でしたので、保護者の皆様に宛ててこの短歌を書きました。朗らかに笑う大人でありたいですね。それが家族に、子どもに、幸せをもたらすでしょう。作者の大松達知さんは、だいまつさんじゃなくて、おおまつたつはるさん、と読むのだそうです。名字は難しい(名前はもっと難しい)。

この週末、高校生がウクライナへのロシアの軍事侵攻について取材を受けました(公式ブログ)。週明けには中日新聞に掲載されるそうです。ロシアの侵攻から2か月。西遠では、殉難学徒慰霊式も近づきます。来週の「小さな白板」では、戦争の理不尽について、平和の大切さについて、改めて考えていきたいと思います。

【おまけ】
雨のため、廃品回収もフラワーパークもとりやめました。雨の藤の花にも会いたかったけれど。日曜と言えば「大河ドラマ」。先週の「鎌倉殿の13人」で佐藤浩市演ずる「上総広常」の非業の死を見てから、その衝撃をまだ引きずってます…。今週からは義経大活躍ですが、それもまた悲劇への序章ですね。つくづく思いますが、三谷幸喜さんって恐ろしいドラマを書く方です…(褒めています)。