3連休明けの土曜プログラム ~パフォ練&講堂朝会~

5月の土曜プログラム、こんな光景が見られる季節となりました。

6月のパフォーマンス大会に向けて、各クラスが練習をスタートさせています。イチョウ広場にはクラスTシャツに身を包んだ生徒たちが、練習に励んでいました。

体育館や、体育館南の通路でも、それぞれ、「パフォ練」(パフォーマンスの練習を生徒はそう呼びます)が行われています。責任者の指示が飛び、真剣に聞くクラスメイト達。伝え方も、教え方も、協力性も、この行事での大事な学びなのです。

パフォーマンス大会という行事自体が、実は大事な「課題探究学習」です。テーマを決めて、曲を決めて、テーマを表現する振り付けを決めて、みんなの気持ちも技術もそろえて、ひたすら練習していく…。音楽や衣装も、限られた時間や限られた予算の中で、工夫を凝らして完成させます。 クラスの創造性・協働性が問われます。

高校1年生にとっては、初めてのクラスパフォ-マンス。高3にとっては、最後のパフォーマンス。中学生は縦割りの姉妹パフォーマンスを完成させます。中3がリーダーシップをとる大事な行事です。それぞれのクラスや学年が努力を重ね、だんだん形になって盛り上がっていく過程を、これから見学していくのが楽しみです。

さて、中学生は、1時間目に「講堂朝会」に臨みました。本日のテーマは、「3連休」。5月3日の憲法記念日、5日の子どもの日の新聞記事や、3連休中のテレビ番組などをめぐって、お話しました。中でも時間を割いたのが、5日に朝日新聞に寄稿された梨木香歩さんの話題です。

5月5日、私は朝日新聞に梨木香歩さんが「わくわくの旅に出るみなさんへ」という文章を寄せているのを見つけました。子どもたちへの梨木さんのエールを、ぜひ中学生たちに伝えたいと思い、この記事を切り抜きました。

壇上からまず質問したのは、「梨木香歩さんを知っていますか?」という質問です。知っている中学生は数えるほどでした、でも、「『西の魔女が死んだ』を読んだことがある人?」と聞くと、一斉に手が挙がりました。作者の名前は意識していなくても、たくさんの生徒がすでに彼女の小説に触れていました。

そこで、「わくわくの旅に出るみなさんへ」を朗読する前に、私は、梨木さんの2冊の本を紹介しました。

「ほんとうのリーダーのみつけかた」と「僕は、そして僕たちはどう生きるか」の2冊です。いずれも10代の心に問いかける彼女のメッセージを感じる本で、私はぜひこの機会に、この2冊の本を読む生徒が増えてくれると嬉しいなあと思いながら、紹介しました。そのうえで、寄稿文「わくわくの旅に出るみなさんへ」を朗読し、梨木さんが今の世の中をどう捉え、子どもたち世代にどんなメッセージを発しているのかを解説しました。

寄稿文には一冊の本が紹介されていました。松谷みよ子作「龍の子太郎」という児童文学です。残念ながら「龍の子太郎」を生徒たちは知りませんでした。私にとっても、古い記憶の中に住んでいた本のひとつで、「読んだことある」程度の一冊でしたので、恥ずかしながらわが子に勧めた記憶もありません。しかし、梨木さんにとっては、「山だって動く」と胸を熱くさせた物語だったのでした。太郎の母の行動を紹介する寄稿文後半の文章の熱は、きっと梨木さん自身が読んだであろう少女時代から数十年の時を超えて、今を生きる中学生を新たな「龍の子太郎」の読者にするに違いないと、記事を朗読しながら私は思いました。「龍の子太郎」を読んだ同世代の私が、当時あまり心に響かなかったという今更ながらの残念感もたっぷり反省しながら、一冊の本が一人一人の心に届いた後、どうその人の生き方に醸成され、いつかその次の世代にどう伝わっていくのか…「本をめぐる壮大な旅の可能性」というものを、梨木さんの寄稿文で噛みしめることになりました。

今日は、このほか、大江健三郎さんの追悼番組を見て思ったことや、父が生前集めていた戦争に関する新聞記事の切り抜きのこと、そして来週12日に行われる「殉難学徒慰霊式」に向けて考えてほしいことなどをお話しました。少し難しめのお話を、真剣に聴いてくれた中学生の皆さん、ありがとう。感想をお待ちしています。