小さな白板2025 第26週

7月定期テストの週でした。第26週の白板ラインナップをどうぞ。

7月7日(月) 七夕
あれはいつの夜を亡ぼした燦めきか億光年の光の迅さ
       加藤英彦

七夕の日に、壮大な宇宙を感じさせる一首を書きました。億光年の光、その速さを「迅」の字で。きらめきもまた「燦」の字を使って。漢字ひとつにも作者の魂がこもっています。私自身、燦という字を初めて書いて、緊張しました。

7月8日(火)
ニュースの一部をAIが言ふなだらかさ素直にわれが聞いてゐるなり
       馬場あき子

「今日のニュースをAKの音声でお届けします」というアナウンサーの語りを毎朝聞きます。違和感だらけのAIでしたが、だんだんスムーズになってきたのは私も感じます。
作者の馬場あき子さんは御年97歳。AIの進化に「素直」になっているご自身を客観的に表現しているこの歌に、私も共感しました。

7月9日(水)
タピオカ屋が街の隙間を埋めてゆく令和元年の夏を忘れない
       笹公人

令和元年の夏のこと、生徒の皆さんも覚えているんじゃないかなと思ってこの歌を書きました。街がタビオカ屋さんだらけになったあの夏。流行はどんどん変わっていきますから、こうした歌を皆で共有するのもありかな、と思った次第です。
因みに笹公人さんは7月8日が誕生日だとこの日に知りました。一日遅れてしまいましたー!

7月10日(木)
ゴミの日にゴミを出すこと忘れればしっかりしろと臭う生ゴミ
       俵 万智

わかる~!と生徒にも先生にも共感された短歌です。忘れた事情は様々なれど、ゴミ出しを忘れたら、当の生ゴミに叱られます感じ、分かりますよね。
俵万智さんのこの短歌は、「短歌研究」2024年5・6月号に掲載された「白き父」の中の一首です。お父様の死を歌った中に、この生ゴミの歌がありました。父の弔いの中で生ゴミを出しそびれたことに、この臭いで気づいたのかもしれません。日々の生活に叱られる、という感覚は、「どんな悲しい時もお腹がすく」ことにも似ている気がしました。

7月11日(金)
エサ用のメダカは一ぴき十五円食べられる日を知らずに泳ぐ
      山添聡介

山添聡介君の短歌を紹介するのは、今回で3回目です。前回は、今年の6月21日(土)に書いた「ふうせんが九つとんでいきましたひきざんはいつもちょっとかなしい  やまぞえそうすけ」という2020年の作品でした。当時聡介君は小学1年生。今回の短歌は、作者名も漢字表記で投稿されたもの。2024年の「第41回朝日歌壇賞」として、朝日新聞2025年1月12日に掲載されました。「ペットショップでエサ用のメダカが売られていてびっくりしました。エサになるって決めないで。」という聡介君の言葉と共に。永田和宏先生の〈評〉に「命の大切さへの気づき。」とありました。小学生の純粋な心に、エサ用のメダカはどう映ったのか…。この気持ちを大人は忘れてしまっていないでしょうか。

【おまけ】小さな生き物、西遠編。先日、ローズガーデンで出会ったものたちです。