小さな白板2023 第42週

すっかり寒くなりました。今週の「小さな白板(ホワイトボード)」は、前半が「通信機器今昔」がテーマ。木・金曜日は、大庭が泊りがけの出張だったため、ある新聞記者の言葉を2日間掲げました。

11月13日(月)
充電をしてくださいと言ってくるケータイは素直な欲望を持つ
     沖ななも

携帯電話、スマホ。便利なアイテムを身近に持った人の実感でしょうか。「充電をしてくださいと言ってくる」という擬人法を使ったり、「充電」を「素直な欲望」だと評したりと、携帯に人格があるかのように読める歌です。携帯の欲望は素直だけれど、それはかわいいのでしょうか。それとも、かすかな脅威なのでしょうか。

11月14日(火)
封じたるのちの思ひに悔あれど手紙は言葉過ぎざるがよし
    来嶋靖生

携帯という便利なものの対極に、手紙というアナログな通信方法があります。一発勝負の文章をペンで書いて、心を込めて封をして…、そのあと「ああ書けばよかった」「変な表現だったかもしれない」などと後悔するものです。思いはストレートには相手に届きません。封をしたなら、もうそこからは後戻りできませんね。だからこそ、作者は言います。「手紙は言葉過ぎざるがよし(書きすぎないほうがいい)」と。ちょっと物足りないような表現、完璧ではない表現こそがいいのかもしれません。

11月15日(水)
ヘッドホン外した時の静寂にどこか似ている恋の終わりは
    佐藤りえ

ヘッドホンを外した時に感じる、身を置く世界の静けさ。ヘッドホンをしていると、耳から入ってきた意中の人の歌声や演奏を、誰にも邪魔されずに大音量で聴くことができます。そうやって音楽を堪能している人が、今度はヘッドホンを外したとたんに、独りぼっちを味わうほどの静寂の中にぽつんと置かれてしまいます。それを「恋の終わり」と似ているんだと考える作者の想像力。
生徒の皆さん、たまには図書館で「恋」の字に出会うのもいいでしょう?

11月16日(木)・17日(金)
結局、ヒッチハイクで世界を何周しようが、被災地やアフリカで死線をくぐろうが、人が生きる意味なんてわからない。ならば、近くにいる人を大切にして、できるだけ謙虚に、自分がやりたいと思ったことを信じて、全力を注ぐだけ。権威権力の側にではなく、必ず力の弱い方の側に立つ。それで現状いいのではないだろうか
        三浦英之

三浦英之さんは、「南三陸日記」などの著作で知られる新聞記者です。彼は「人が生きる意味」について考え、答えを「わからない」としたうえで、「(それ)ならば」と自分が実践すべきことをまとめています。「身近な人を大切にする」・「謙虚に」・「やりたいと思ったことを信じて全力を注ぐ」そして「弱い方の側に立つ」。こうした姿勢を、私たちもまた学びたいですね。

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つわぶきの季節です。今年の開花は少し遅めでした。