10月最終週、そして11月を迎えた「小さな白板(ホワイトボード)」です。テスト期間中でしたが、読んでくれたかしら?土曜日の中学講堂朝会のヒントを込めた日もありました。
10月27日(月)
いまは子どもの頃から無防備な状態で、SNSのような不特定多数を相手に、文章で少し失敗すると攻撃を受けうるところに投げ出される。依存させる仕組みもある。それは非常に危険なこと。軌道修正して危険から遠ざけるのは、そういうインフラを作ってしまったわれわれ大人の責任です。
俵 万智

俵万智さんのインタビュー記事(ウェブ朝日『SNS、日本語に「悪い二極化」 「国語に関する世論調査」 俵万智さんに聞く』2025年10月15日)を読んでいて書き留めた言葉です。「大人の責任」という言葉にぎくりとしました。今の状況を作った大人が、今度は子供を危険から遠ざける責任があるのだという言葉、私たち大人の戒めとして白板に書きました。
10月28日(火)
学ぶことは楽しいことなのです。学び続けることはもっと楽しいという姿勢を大人が示さないと精神的に貧しい国になってしまいます。
入澤 崇

これは以前に書き留めておいた言葉。「大人の責任」という月曜のキーワードから、この言葉を翌日書くことにしました。「学ぶこと」「学び続けること」の楽しさを私たち大人が伝えていかないと、日本は大変貧しい国になってしまう…。龍谷大学理事長の入澤先生の言葉には、いつもハッとさせられます。
今、リカレント教育に取り組む大学も増えています。リカレント教育とは、学校卒業後に働きながら必要な時に学び直し、就労と学習を循環させること。大人が学び続ける環境も、今、整いつつあります。大事なのは最終学歴でも偏差値でもなく、一生を通して学び続けること。私たち大人に突き付けられている課題から、目を背けないようにしたいものです。
10月29日(水)
未来は予見できない。過去を知って『今』を知ることが大切。そして、自分をどのように導いていくかを考えることで未来がやってくる。
千 玄室

千玄室さんは今年8月14日に102歳で亡くなりました。特攻隊の生き残りとして、茶道を通し平和を訴えてきた方です。亡くなる2か月前の6月15日に、講演会で千玄室さんが語った言葉です。過去を知り、今を知る。そのうえで、自分自身をどう導いていくかを考えることが、「未来」につながる、と。命尽きるその間際まで、大事なことをたくさんの人々に語り、ひと椀のお茶で平和の心を広めてくれた一生でした。
10月30日(木)
どこかに自分の居場所がある。受け入れてくれる人がいる。そう思えることで人はほんの少し強くなれる。
いとうみく作「蒼天のほし」より

「蒼天のほし」は、旧ツイッターで知った本です。本校卒業生で朝日新聞記者の山下知子さんが、「蒼天のほし」作者のいとうみくさんにインタビューした記事を読み、「夜間保育園」のことを知り。本を購入しました。「居場所」のあること、「受け入れてくれる人」のいることの大切さが心にしみる本でした。山下さんの記事は、有料ですが、こちらから読めます。
10月31日(金)
どんなに賢くっても、にんげん自分の背中を見ることはできないんだからね。
山本周五郎作「さぶ」より 与平の言葉

中学講堂朝会でも紹介した名文です。私はこの言葉に高校1年生で出会い、それからずっとこの言葉をかみしめています。山本周五郎という作家の温かさを感じるセリフです。
「さぶ」の主人公は、さぶではありません。栄二という腕のいい職人です。栄二は無実の罪を着せられ、人足寄場に送られます。そこで出会った与平さんという心優しい老人が、栄二に語り掛けた言葉がこれです。与平やさぶのおかげで、栄二は今まで気づかなかった無名に人々の献身や優しさに気づいていきます。生徒の皆さんにも一度読んでほしい名作です。

11月1日(土)
知らねぇっていうことはな 怖ぇことなんだよ。物事知らねぇとな 知ってるやつにいいようにされちまうんだ。
大河ドラマ「べらぼう」(10月26日放送)より
須原屋さんのセリフ

この言葉は、講堂朝会の中でも紹介しました。みんな、スライドに映し出されたこのセリフを、江戸っ子っぽく声を出して読んでくれましたね。
知らないことで、知ってる人間にうまく利用されてしまう、という怖さを語った須原屋さん。ドラマを超えて、現代への警鐘と受け取りました。
中学生の皆さん、知識を増やしていくためにも、読書しましょうね!

