図書館入り口に掲げている「小さな白板(ホワイトボード)」は、短歌や俳句、歌詞の一部や名言など、様々な言葉と心を、生徒の皆さんに届けています(届いていると信じたい!)。今週は、慰霊式もありましたので、平和に関するメッセージも書きました。では、5月11日から16日のラインナップをどうぞ。
5月11日(月)
翡翠は暮れそむる川面ひくく飛ぶ青をひかりに返して黒く
米川千嘉子

翡翠(カワセミ)って、素敵な鳥ですよね。まだ写真に収めたことがなく、私にとってあこがれの鳥のひとつです。
この日、カワセミを取り上げたのは、今週が「愛鳥週間(バードウィーク)」だったからです。
環境省さんによりますと、
戦後の復興が進められていた昭和22年4月、アメリカ人の鳥類学者オリバー・L・オースチン博士の提唱により、「鳥類についての正しい知識と愛護思想の普及」を目的とした「バードデー」が定められました。その後昭和25年には、この運動をより広めるため、毎年5月10日から16日までの1週間を「愛鳥週間(バードウィーク)」とすることが定められ、現在に至っています。
とのこと。私も愛鳥週間に生徒の皆さんが鳥への興味を持ってくれるといいな、と思い、毎年、愛鳥週間には鳥の短歌を白板に書いてます。カワセミの歌、心に届いたかな?
5月12日(火)
名前の数だけ命があって、その命は輝き、守られるべきだと思います。世界中の戦争が早く終わりますように。
小泉今日子

殉難学徒慰霊式のこの日、「平和」のメッセージを届けたくて、どの短歌にしようかなと考えておりましたが、先日還暦コンサートを行った小泉今日子さんの言葉を見つけ、これを書くことにしました。あのキョンキョンが還暦かぁ…と自分の年齢は棚に上げて感慨深く思ったものでしたが、平和の大切さを発信する彼女の潔さは、本当にカッコいいですね。彼女は、ゴダイゴが1979年に発表した「ビューティフルネーム」をカバーしています。1979年は『国際児童年』。この歌はその協賛歌として毎日流れていました。
♪Every child has a beautiful name, beautiful name, besutiful name♪
この歌、私も前奏が流れたら歌い出せる世代ですが、小泉今日子さんが今こそ、子どもたちの命を大切にと、歌い継いでくれたことをうれしく思いました。白板の言葉は、4月3日のテレビ番組でのインタニューで彼女が語った言葉です。
ちなみに、この言葉を受けて、歌人で高校教師の千葉聡さんは、こんな短歌を発表しました。
今日子さんの声で名前を呼ばれ今、みんなが「はい」と答えています
私も「はい!」と答えています。
5月13日(水)
飛ばされる駅で見ているのぞみほど速いものなし 夏はもうすぐ
具志川具志男

浜松駅の利用者である我々には、とっても共感できる歌ではないでしょうか。プラットフォームでひかりorこだまを待つ間、のぞみが轟音とともに駆け抜けていくとき、しばらくおしゃべりを止めて見守ってしまいます。浜松駅に停車してくれない悔しさも感じながら…。
この短歌は、横光利一の「頭ならびに腹」という短編小説の冒頭をも連想させますね。
「真昼である。特別急行列車は満員のまま全速力で馳けてゐた。沿線の小駅は石のやうに黙殺された。」
横光の文章は新感覚派ならではの表現で有名ですが、具志川具志男さんのこの短歌には、さわやかに夏の到来を待っている清々しさを感じます。
5月14日(木)
花言葉に、嬉し涙、を持つらしく山葵はきっといい奴だよね
千種創一

花言葉を知って山葵(ワサビ)のこと「いい奴だよね」と思う作者の優しさにやられました!思わず微笑んでしまう短歌ですね。
ワサビの花ことばは「嬉し涙」だったんですね。知りませんでした。
5月15日(金)
変わらないことで付きまとうのが不満。変わろうとすることで生まれるのが不安。前を向いていないと不安は生まれない。
「テミスの不確かな法廷」第一話より
精神科医山路薫子の台詞

少し前にNHKで放送していた「テミスの不確かな法廷」は私のお気に入りのドラマでした。そこに登場する精神科医の山路先生(和久井映見)が、主人公の不安を知り、掛けた言葉がこのセリフです。不満と不安の違いを説明し、不安なことを前向きにとらえるこのセリフに励まされた気がして、慌てて書き留めたオオバでした。不安な時、しり込みしそうですが、でもそれは前を向いているからだ、と捉えると、何だか勇気が湧いてきますね。
5月16日(土)
日に日に生きづらく平和や平等が遠のいていく世界において、エンタメには即効性がなく、できることはゼロに近しく微々たるものです。でもエンタメは誰かに寄り添う居場所になり、誰かが声を上げる力になる。そして社会に横たわる問題を打ち破る雨垂れの一滴になると信じています。
吉田恵里香

昨日の講堂朝会でも、この言葉を取り上げました。吉田恵里香さんは、以前私が「トモコとトモコとエリカと憲法」というタイトルで講堂朝会(2024年5月)で取り上げたエリカさんです。朝ドラ「虎に翼」の脚本を担当し、心に残る台詞をたくさん書いた吉田さん。雨垂れの一滴という表現もまた、「虎に翼」に登場した言葉でした。エンタメは娯楽として軽く扱われるかもしれませんが、「誰かに寄り添う居場所」「声をあげる力」「社会に横たわる問題を打ち破る雨垂れの一滴」になる…。脚本家としてエンタメに携わる吉田さんは、自分の発信が「雨垂れの一滴」になることを信じて一言一言のセリフを書いているのです。「虎に翼」の感動が蘇りました。講堂朝会でお話した通り、「大地の子」の舞台を見て、その制作者や出演者の強い意志を感じたことも蘇りました。戦争が起きれば、エンタメは一番最初に排除されてしまいます。そうならないように、エンタメ業界で気骨ある発信をしている人が少なくないことを、最近改めて感じています。

