入日色

日本語には、素敵な「色」の名前がありますね。
古くからある色の名前、「緋」「群青」「浅黄」などもさることながら、
詩人が作り出す「色」にもハッとさせられる言葉があります。
先日、卒業生の西尾舞衣子さんのリサイタルが掛川で行われ、私も行かせていただきました。

西尾さんが「こどもたちに伝えたい、日本の歌」として「宵待草」や「初恋」「この道」などの名曲をしっとりと歌いあげました。
第2部では「芥子粒夫人(ポストマニ)」という、あるお姫様の物語を、同じく西遠の卒業生で朗読の世界でご活躍の堤腰和余さんの朗読と、西尾さんの歌で綴りました。
一曲一曲に魅せられ、堤腰さんの朗読の声にも魅せられた私でした。
大きな拍手でプログラムが終わった後、再び舞台に登場した西尾さんのアンコール曲は「ちいさい秋みつけた」でした。
ピアノの前奏が始まったとたん、何とも言えない懐かしさを全身で感じました。
ずいぶん久しぶりに聴くなあ…とも思い、噛みしめるように聴いたのでした。
すると、3番の歌詞の「はぜのはあかくていりひいろ」という表現が、とても胸に響きました。
同時に、学園にある「はぜ」の葉の色を思い出しました。


教員室の南にあるナンキンハゼの木は、今、日に日に紅葉していて、赤い葉がお日様の光を受けて照り輝いています。
グラデーションのある赤ですが、冷え込みが続けばきっと真っ赤になることでしょう。
そんなはぜの葉の赤い色を、「いりひいろ」と表現した詩人サトウハチロー。
宝石みたいな言葉だなあと感じました。
今までに数えきれないくらい「ちいさい秋みつけた」を聴き、歌ってきたけれども、「いりひいろ」をこんなに身近に感じたのは初めてでした。
サトウハチローのような感性や発想力は、もちろん私にはありません。
しかし、詩人の目を通し、心を通した「いりひいろ」と言う言葉が、詩人を介して、あるいはそれに曲をつけ、歌ってくださる方を介して、こうして心にすうっと入ってくる…これは素敵なサークルだなあと思いました。
先日観た映画「この世界の片隅に」の主題歌「悲しくてやりきれない」の詩も、サトウハチローです。
思えば、サトウハチローという人は、私が幼かった頃、もっとたくさん私の周りにたくさん歌になって存在していました。
郷愁を誘う歌。
ちょっと疎遠になっていた日本の歌。
西尾さんの歌で、しまっていた思い出が歩き出したように、
「いりひいろ」と言う素敵な言葉に誘われて、
私も昔の歌を、サトウハチローの詩を、また味わってみたくなりました。