小さな白板2022 第6週

図書館入り口に掲げた「小さな白板(ホワイトボード)」、第6週は愛鳥週間にちなみ、鳥の短歌を集めました。

5月9日(月)  小鳥らは弾む命を持て余し木の芽雨ふる宙をゆきかふ  青木昭子

明日から愛鳥週間(バードウィーク)ということで、ホワイトボードで鳥の歌を紹介しようと思い、初日にこの短歌を選びました。そしたら、雨が降っちゃいました…。雨の降る中、枝を賑やかに飛び回る小鳥たちの姿、私もよく目撃します。「弾む命を持て余し」って、そんな小鳥たちのエネルギーにピッタリだなあと、この短歌に出会ったときにいたく共感しました。月刊誌「短歌研究」2022年5月号には、鳥の登場するたかがとても多くあり、この青木昭子さんの短歌にも、この冊子で出会いました。

5月10日(火)  電線にとまる一羽の黒い鳥おのれの名前を知らぬ長閑さ   沖ななも

沖奈々もさんのこの短歌も「短歌研究」5月号から。黒い鳥と言えばカラス!と私たちはすぐに名前が言えますが、当のカラスは自分が何という名前の鳥か、だなんて知らないのです。先日、私は、一羽のカラスがのんびり羽繕いをしている現場(講堂西の通路)に出くわしました。私が通路を通ったらびっくりして飛び立つかなあと思って、遠巻きにしばらく撮影していたのですが、驚かせちゃうなんて言うのは全くの杞憂(きゆう)で、結局私が横を通っても、悠々とそこにいて羽繕いにいそしんでいました。これも一つの長閑さだな~と、この短歌に結び付きました。

5月11日(水) 白鷺の翼に光る夏の陽の青田爽かに風にそよげり   松本貞輔

昨日の黒い鳥から、この日は白い鳥へ。白鷺と青田、夏の陽と爽やかな風。鮮やかな対比に、風景が浮かぶようです。この短歌は昭和54年に発行された『三光鳥』第26号所収の「白鷺に題す」より。冊子名もまた鳥の名ですね。

5月12日(木)  戦争をしない生きもの春の野に雲雀と燕がこぼすさえずり   篠原俊則

雲雀(ひばり)と燕(つばめ)のさえずりがこぼれる春の野原。朝日新聞の「朝日花壇」5月1日に掲載された短歌です。殉難学徒慰霊式の朝、この短歌を掲げました。鳥は「戦争をしない生きもの」です。そのさえずりの美しさに、戦争のむなしさを余計に感じます。今年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも小鳥のさえずりが効果音としてよく使われていて、戦い抜いていく主人公の生きざまと対比的な鳥の声だなあといつも思っています。

慰霊式の舞台を飾ったお花は、生徒たちが思い思いに家に持ち帰って、第2のステージでまた咲き誇ります。執行部の生徒たちが、校長室にもお花を分けてくれましたので、黄色いアルストロメリアとアイリス、ピンクや紫のスターチスを中心に即興アレンジしてみました。プランターに残っていた花も少しもらって、アレンジを完成させました。明るい校長室になりました。

5月12日(金) 電線にながく止まりている一羽さびしかろうが翔びたちなさい   江副壬曳子

鳥の短歌を探していると、鳥に自分の思いを託している短歌に多く出会います。この江副さんの短歌にもそれを強く感じました。電線にずっと止まっている鳥に「一羽」であることの寂しさを感じ、その鳥に「寂しいだろうけれど、しっかり大空に飛翔しなさい!」と願う…。それは、自身の孤独やそれを振り切る決意を促す心の声ではないか、と。電線の鳥を見上げている作者の心の中を推しはかりたくなる一首でした。

愛鳥週間は来週5月16日までです。どうぞ、皆様も空を見上げて、鳥を探してみてください。スズメもカラスも愛くるしい。ツバメも賑やかに飛び回っています。

慰霊式の朝、一羽のシジュウカラが電線で長いことさえずっていました。ピンボケでしか写せませんでした…。シジュウカラの鳴き声は、遠くへも伝わります。かつて「ダーウィンが来た」で、どの鳥の声が一番遠くまで聞こえるかを検証していた記憶があるんですが、シジュウカラはダントツ1位でした。シジュウカラの声が聞こえると、空を見上げて声の主を探しますが、本当に遠くにいることがあって、なかなか見つけられません。朝、正門前で空を見上げているオオバを発見したら、どこかにシジュウカラがいるんだなと思ってください。