小さな白板2022 第8週

図書館入り口の「小さな白板(ホワイトボード)」は、定期テストとパフォーマンス練習で忙しく飛び回る生徒たちを見つめる一週間でした。(最後にパフォ練習の写真あります。)

5月23日(月)
(好きな色はなんですか?と聞かれて)
全部好きだよ。どの色が、というよりも、色の組み合わせがだいじなんだ。  エリック・カール  

絵本「はらぺこあおむし」のエリック・カールさん。5月23日は彼の命日です。昨年の5月23日、彼は天に召されました。たくさんの子どもたちとかつての子どもたちが彼の死を悼みました。あの「はらぺこあおむし」が前代未聞の穴の開いた仕掛け絵本としてその出版までに苦労があったことや、出版を請け負ったのが日本の出版社だったということも、昨年、彼の訃報をきっかけに知ったエピソードです。独特の色使いは自由で華やかでしたね。その彼の、すべての色を好きだという言葉、色の組み合わせが大事だという考え方も、彼の人生を物語るようです。

5月24日(火) 元始、女性は太陽であった。 平塚らいてう

「女性史」をたどれば、必ず彼女に出会います。1911年(明治44年)に創刊された女性誌「青踏」は、平塚らいてうのこの一文から始まりました。創刊の辞はこう続きます。「元始、女性は実に太陽であった。真正の人であった。今、女性は月である。他に依って生き、他の光によって輝く、病人のような蒼白い顔の月である。さてここに『青鞜』は初声を上げた。・・・」月のような存在となった女性が再び声をあげる時が来た、と歌った平塚らいてうは、1971(昭和46)年5月24日に満85歳で亡くなりました。明治、大正、そして戦争の時代を生き抜いた彼女は、昭和の繁栄と女性の地位の向上をどう見ていたのでしょうか。

5月25日(水) 日本語は与謝野晶子の熱風に生きて動きて飛びて散りにき 高村光太郎

高村光太郎連翹忌運営委員会のブログを定期的に読ませていただいています。ブログの最後にいつも【折々のことば・光太郎】として、光太郎の日記の言葉が記されているのですが、ある日、この短歌が紹介されていました。

昭和26年(1951)5月25日の光太郎の日記に、この短歌と共に「与謝野晶子没後十周年記念講演会に電報で一首送る。」と記されているのだそうです。光太郎69歳の時のことです。与謝野晶子は1942年5月29日に亡くなりました。あ、今日が命日ですね。

与謝野晶子は光太郎の5歳年上。青年期、光太郎は短歌を作っていた時代もあり、親交があったことも知られています。後年、光太郎は与謝野晶子の葬儀で弔辞を読みました。この短歌は晶子没後10年の式典に向けて書かれた短歌ですが、与謝野晶子のほとばしるエネルギーを感じさせる一首だなあと感じました。与謝野晶子をよく知る光太郎だからこその偽らざる想いだったのかもしれませんね。

5月26日(木) 偶然は準備の整った精神のみに微笑む   ルイ・パスツール

ルイ・パスツール(1822年12月27日 ~ 1895年9月28日)は、近代細菌学の開祖の一人と言われる、フランスの細菌学者です。ワクチンの予防接種という方法を発明し、狂犬病やニワトリコレラワクチンを発明しました。今年、生誕200年とのことです。準備が整った精神にしか偶然は微笑まない、つまり、研究・実験・調査の努力をした者にしか素晴らしい成果は来ないということですね。肝に銘じましょう。ちなみに、フランス語では、 Le hasard ne favorise que les esprits préparés だそうです。

5月27日(金)
思考停止をやめること、考え続けること。このことは、じつは、意識を眠らされてでもいない限り、仕事や生活や社会的責任の違いを超えて、私たちのだれにとっても可能なことです。そして、勇気をもって発言し、行動することは、考えつづけることの上に立ってのみ可能なのです。
               高橋哲哉(「茶色の朝」所収のメッセージ)より

この本「茶色の朝」は、昨年度「人権を考える」講堂朝会で紹介した一冊です。思考停止してはいけない、考え続けることこそ大事だという高橋哲哉さんの言葉は、折に触れ、自分に言い聞かせている言葉です。「茶色の朝」は、短い物語ですが、とても怖い展開です。思考停止が怖い結果を生むことを思い知らされます。

5月28日(土) 
 平和は歩いてきてくれない。その火を消すな。どんどん薪をくべろ。  早乙女勝元

5月10日に亡くなった作家の早乙女勝元さんが唱え続けた言葉だそうです。告別式で、早乙女さんのお嬢さんがこの言葉を取り上げました。「『平和は歩いてきてくれない。その火を消すな。どんどん薪をくべろ』とは勝元語録の一節です。この火種を消さないように皆さんの手で薪をくべてほしい」(東京新聞の記事より抜粋)と呼びかけたとのこと。平和を維持し続けるために、重く受け止めたい言葉です。

講堂朝会(中学)で平和についても取り上げた昨日、この白板の言葉に1人でも多くの中学生が気づいてくれたら嬉しいなと思い、この言葉を書きました。

土曜日は、パフォーマンス大会の練習が学園のあちこちで繰り広げられていました。こうして思い切り体を動かすことができるのも、平和だからこその光景ですね。

来週は、教育実習スタート、パフォーマンス大会、体育大会、…忙しい週となりそうです。