今年度最後の講堂朝会

今年度最後の講堂朝会は、「本について 読書について」と題して、パワーポイントを使って行いました。
全校講堂朝会でしたが、家庭学習中の高校3年生はいないので、6学年入場の最前列を占める彼女たちの顔が見えないのは寂しくもありました。
が、今日のお話は、みんな一生懸命聞いてくれたな、と思っています。
舞台の上からお話をしながら、今日はみんな心に入っていないなあと思うこともあり、客席の反応というのは舞台上にもちゃんと伝わってきます。
今日は、スクリーンに見入り、熱心に耳を傾け、いろいろ考えてくれた生徒たちの姿がたくさん見えました。
嬉しく思っています。
「本について 読書について」は三部構成でした。
第1部は、西遠の読書事情。
年末に行なった読書アンケート、そして司書の水谷先生がまとめてくださった「2017年度図書館年次報告」から、いくつかの数字を挙げました。
生徒の皆さんはあの数字を見て、どんな感想を抱いたでしょう。
第2部は、読書クイズ。
作者名を答えるのが3題、主人公の名前からその作品名を答えるものが4題、そして冒頭の一文から作品名を答えるものが3題の合わせて10問。
先生方も加わって、みんなで頭をひねるクイズタイムとなりました。
話し合ってもいいし、記録ノートを見てもいいよ、と言ってからの皆さんの動きは、舞台から見ていて、何だかかわいかったです。
第3部は、「校長オオバの青春(?)読書遍歴」。
小学校時代から、西遠での6年間、自分がどんな読書をしてきたのかを、ざっと辿りました。
個人の体験を話したのには、いくつか理由があります。
一つは、具体的に本をたくさん紹介したかったこと。
そして、本を読むきっかけが何であったかを語りたかったことです。
特に、私自身、西遠在学中にたくさんの先生方から読書の世界を広げていただいたことを伝えたいと思いました。
本というものは、誰かから誰かへと引き継がれていくものです。
先生から生徒へ、親から子へ、そうした「継承」の体験もお話したいと思いました。
また、図書館でその本たちの写真を撮り、スクリーンで紹介ました。
本を視覚的に紹介することで、心に残り、図書館を訪ねてくれる契機になればとも思いました。
だって、36000冊もある、素晴らしい図書館を、もっともっと生徒に利用してもらいたいのです。
スクリーンに登場した写真の中から、いくつかを紹介します。

中学3年生の時、国語の乾先生が紹介してくださった「木かげの家の小人たち」(いぬいとみこ)は、初めて触れるファンタジーの世界でした。
すごくいい本に出会えた、という嬉しさを自作の「読書ノート」に綴り、乾先生に読んでいただきました。
素敵なコメント(長い文章でした)の最後に、続編として「くらやみの谷の小人たち」を紹介してくださったのです。
「木かげの家の小人たち」は、後に読み聞かせで私の娘と息子にも「継承」されました。

滝平次郎の絵とセットで読みたい「ベロだしチョンマ」(齋藤隆介)もまた、乾先生によって読むことになった本です。
国語の時間、先生がこの物語を読み聞かせてくださったのです。
主人公が磔(はりつけ)になるくだりで、先生の声が震え、泣いているのが分かりました。
先生の涙声の朗読を聞き、いたく心を揺さぶられたのを覚えています。
すぐに本屋に走りました。
先生の本気が生徒の心に伝わったんだと思います。

私を「ダルタニヤン物語」の世界にいざなってくれたのは、世界史の山口先生でした。
小学校時代、「三銃士」「鉄仮面」は読んだことがありました。
それが、全11巻の「ダルタニヤン物語」だと先生のお話で知り、しかもこの本の魅力を本当に熱く熱く語る先生の情熱にすぐに「感染」、本が届くのが待ちきれないほどの勢いで全11巻を読破したのでした。
後年、教員になってこの本の魅力を説く私に、今は亡き山口先生が「大庭さんがこの本を継承してくれて、僕はほんとに嬉しいよ」とおっしゃった言葉は、今でも私の宝物です。
生徒に何人かのファンを作り、我が子も三銃士ファンにして、この本を、先生→私→生徒&娘・息子へ と「継承」したのでした。

母から私に「継承」された一冊が、「智恵子抄」(高村光太郎)でした。
小学4年生の私に、旧字体の詩集はとても難解でしたが、智恵子と光太郎に興味を持ち、大人の詩集の世界を垣間見て、この本が大学の卒業論文のきっかけにもなりました。
ぼろぼろの古い本ですが、この一冊はまさに「私の一冊」です。
時間の関係で紹介できなかった、この「智恵子抄」の継承のエピソードがあります。
実は、先日、駅で卒業生に会ったのです。
彼女は30代、卒業してからあまり音信もなく、本当に久しぶりの再会でした。
すると、彼女が「先生、高村光太郎好きでしたよね?」と突然言うのです。
「あれから私、『智恵子抄』読みましたよ!良かったです」と彼女。
光太郎を読む時に、昔担任だった私のことを思い出してくれていたのだなあと、しみじみ嬉しく思いました。
本は人から人へと継承されていく…。
そのことを生徒の皆さんが、そして先生方が理解してくれたなら嬉しいです。
今日の記録は、「集会記録」にではなく、今日配った用紙に「私の好きな本」「ちょっと読みたくなった本」「友だちにすすめたい本」のいずれか一冊を書いてもらうことにしました。
月曜に提出してもらい、すべて私が読みます。
遅くなるかもしれませんが、全員にコメントを書いて返したいと思います。
先生の本気が生徒に届くこと、その大切さを、今回の講堂朝会の準備の中で改めて痛感しました。
生徒の皆さんの本気の紹介文が届くのを、楽しみに待ちたいと思います。
今日取り上げた本を、「続き」に掲載しますので、興味があったらご覧ください。
生徒の皆さんに思い出してもらうためにも、記録しておきます!


本日取り上げた本・スクリーンに映された本(上記を除く)
【クイズ】
「赤毛のアン」モンゴメリ
「しろばんば」井上靖
「星の王子さま」サン=テグジュペリ
「あしながおじさん」ウェブスター
「若草物語」オルコット
「車輪の下」ヘッセ
「アルジャーノンに花束を」ダニエル・キイス
「注文の多い料理店」宮澤賢治
「坊っちゃん」夏目漱石
「くまのプーさん」ミルン
【オオバの読書遍歴】
「野口英世」「石川啄木」(伝記)
「三銃士」デュマ
「紅はこべ」バロネス・オルツィ
  ※「スカーレット・ピンパーネル」です
「アグラへの冒険旅行」ゾンマーフェルト
「名犬ラッシー」ナイト
「悲劇の少女アンネ」「アンネの日記」
「動物農場」オーウェル
「狭き門」ジッド
「大地」パール・バック
「赤と黒」スタンダール
「戦争と平和」トルストイ
「初恋」ツルゲーネフ
「レ・ミゼラブル」ユーゴー
「アラスカ物語」新田次郎
「さぶ」「日本婦道記」山本周五郎
「火の路」松本清張
「それから」夏目漱石
「旅の絵本」シリーズ 安野光雅