小さな白板2023 第7週

図書館入り口に掲げた「小さな白板(ホワイトボード)」。今週は、バレンタインウィークだったので、愛の歌・恋の歌特集にしてみました! 生徒の皆さん、お気に入りの短歌はありましたか?

2月13日(月)
  抱きしめることと束縛することの違いを百字以内で述べよ   佐藤りえ

愛と束縛、包容力と呪縛…。愛の世界は難しいなあ、ということで、恋愛の歌ウィークの冒頭はこちら! 面白い短歌だなあと一目ぼれした短歌です。皆さんは抱擁と束縛の違いを100字以内で述べられますか?笑 

2月14日(火)
 はい、あたし生まれ変わったら君になりたいくらいに君が好きです。  

                      岡崎裕美子

女の子は愛の告白もズバッと直球ど真ん中! この元気の良さ、宣言の気持ちよいほどのストレートさがいいですね。告白された相手はかなりビビると思いますが、自分の意思表明ですもの、ガンガンいきましょう(笑)。

2月15日(水)
  君からのメールがなくていまこころ平安京の闇より暗し   笹公人

平安京の闇…。芥川龍之介の「羅生門」を教わりたての中学3年生には、この表現で闇の深さ・暗さが分かるでしょう。メールという現代の産物と1000年前の平安京とを一緒のラインに乗せて、メールを待ちわびる胸中を表現するなんて、作者の思いの深さや不安の大きさがうかがわれます。君、早くメールしてあげてください!

2月16日(木)
 せめて君僕の心をもぎ取って中を見てから答えてくれよ  今村豊隆

第3回短歌ジュニア賞 高校生の部金賞の作品です。片想いの相手が放つ言葉が矢のように突き刺さっているであろう作者。せめて「僕の心をもぎ取って中を見て」から言葉を投げてほしいという、せつない思いが、まさに青春だなあ。私はこの短歌を味わいながら、河野裕子さんの名歌「たとへば君ガサッと落ち葉すくふやうに私をさらつて行つてはくれぬか」を思い出しました。こうして比較すると、女性の恋愛の歌の方が大胆で積極的ですね。

2月17日(金)
  声もたぬ樹ならばもっときみのこと想うだろうか葉を繁らせて   小島なお

君への想いは強くなる一方だけれど、言葉を持っているわれわれ人間は恋以外のことだって、いろいろ語らなくちゃいけない。もし、声や言葉を持たない樹木であったなら、葉を繁らせるという行為が唯一の内面の表出手段かもしれません。樹ならばそうするであろう恋愛感情の一途さが、作者にはうらやましくもあるのではないでしょうか。

2月18日(土)
  君が行く新たな道を照らすよう千億の星に頼んでおいた   梅津貴司

ほんとは別に用意してあった「愛」についての短歌があったのですけれど、前夜の朝ドラ「舞い上がれ」を録画で見たら、この歌しかないなと思い、急遽この短歌に変更しました。この「梅津貴司」は役名であり、赤楚衛二君演じる梅津貴司が主人公の舞ちゃんへの恋心を秘めながら、新しい進路を目指し始めた彼女を応援する一首です。この思いが通じてよかったね、貴司君。

学校で恋愛の歌を掲載するって、結構照れますね。でも楽しい歌選びの一週間でした!