小さな白板2023 第35週

図書館入り口に掲げている「小さな白板(ホワイトボード)」。「敬老の日」の休日明けから「秋分の日」前日までの4日間のラインナップをお届けします。

9月19日(火)
おばさんでごめんねというほんとうはごめんとかないむしろ敬え
     岡崎裕美子

週明け、いきなりの命令口調の短歌です(笑)。「敬老の日」に乗じて、おばさんたちの気持ちを書いてみました! 「若いのが大事で、歳を取ったら価値がない」みたいな「若さ偏重主義」的傾向はテレビ界・ファッション界などにも依然として根強いようですが、いえいえ、おばさんは敬われて当然ですよ。ごめんねとかついつい言っちゃうけれど、本心なんかじゃありません。女性教員に共感された週明けの一首でした!

9月20日(水)
いつかはねって淋しくわらうニッキだけ底にのこったドロップの缶
     北川草子

一首くじ引きでもするように、ドロップの缶から一個ずつ出しては、赤・黄色・オレンジ・緑といったきれいな色のドロップをほおばっていた幼い頃。ニッキの白いドロップだけは甘くないので苦手でした。だから、この短歌、わがことのようで郷愁を誘われました。
「いつかはね」って、缶の底に残ってしまったニッキドロップに向かって言っているのでしょうか。それとも、ニッキが食べられるようになるはずの、成長する自分に言っているのでしょうか。「淋しくわらう」という表現に、食べなくてごめんという罪悪感のような甘酸っぱさを感じます。

9月21日(木)
見ると涙がこぼれる雲がある九月どの雲も元は人のたましひ
    荻原裕幸

荻原さんの短歌はとても繊細で、優しい目を持っているなあと思います。雲は人の魂なんだ、そんな目で雲を見上げると、夏を通り越した優しい空の雲が、こちらに向かって何か伝えてくれているようにさえ感じます。私たちは、人の魂だった雲に、見守ってもらっているのかもしれません。皆さんも青空を見上げてみませんか?白い雲を見て、感傷的になるもよし、大空を見上げて深呼吸するもよし。

9月22日(金)
たくさんの空の遠さにかこまれし人さし指の秋の灯台
        杉崎恒夫

秋空の下に突っ立っている灯台を「人さし指」に見立てています。「たくさんの空の遠さにかこまれ」ている、という表現に、賑やかだった夏とは違う静けさや孤独感も感じますね。
秋分の日が過ぎ、「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉のような、朝晩の涼しさを感じる頃となりました。実は、明日から西遠は「冬服OK」のフレックス期間に入ります。まだ冬服には早いかもしれないけれど、せっかくのこの季節、秋の美しい空や優しい風、美しい夕焼けなどを心の目で堪能したいですね。