1945年の終戦から80年となる今年、西遠では生徒会が主催する行事「殉難学徒慰霊式」を実施致しました。

舞台を飾る折り鶴と花々。生徒の力だけではこれだけの数は集まりませんでした。卒業生や地元の皆様、お店の方々、郵送してくださった方など、本当にたくさんの方が、鶴を折ってくださったり、お花を届けてくださったりして、今年の慰霊式にご協力くださいました。皆様、ありがとうございました。心より感謝申し上げます。
朝、お花を持ってきてくださる一般の皆様のために、正門前などにお花の受付を作りました。

生徒や保護者の方は、「愛の灯」像の前の献花台に花を捧げてくれました。
図書館下では、生徒たちがプランターに花を生けていました。大量の花を見て、先生方も腕まくりでお手伝い。


こうして出来上がった舞台で、今年の慰霊式が始まりました。厳かな空気が講堂を包みます。
殉難学徒の皆様に黙祷を捧げた後、浜松の空襲の実情を記録した番組「小さな赤いトマト」(今から30年前の番組です)を視聴し、続いて、「愛の灯」像の碑文朗読の録音が流れました。碑文を書かれた当時の校長 岡本富郎先生の肉声です。富郎先生のお声を聞くと、私は自分が在学中に実際に富郎先生がこの碑文を読み上げられた慰霊祭を思い出し、いろいろな感慨が押し寄せてくるのです。この碑文朗読のあとにすぐ自分が登壇するため、私は毎年ここで平静を保つのに苦労します。

今年の校長の話として、私は「継承」をキーワードに、平和の大切さを語り継いでいくことについて話しました。親から子へ、子から孫へという「タテ」の継承と、同じ若者世代が交流し共に考える「ヨコ」の継承。戦後80年の節目の年に、ぜひとも生徒たちに考えてもらいたいことです。
そして、今から10年前、戦後70年の慰霊式に向けて、殉難学徒の遺族のお一人橋本みつ様のお手紙の一部を朗読しました。最愛のお姉さまを失った悲しみが伝わってくるお手紙です。幸せを断ち切られたご家族の無念を思い、胸が塞がれるような思いを感じながら、朗読しました。みつ様が綴ってくださったお手紙の全文は、公式HPに掲載されています。こちらからお読みいただけます。
今年は、若い世代の「ヨコ」の継承を実現させたいという思いから、長崎の活水高校を今春卒業した「高校生平和大使」経験者の木場笑里さんにビデオメッセージを寄せていただきました。

木場さんは、昨年・一昨年、九州研修旅行で長崎を訪れた西遠の高校2年生に対し、活水高校の平和学習部のお一人として、交流会にご出席くださった方です。
現在、上智大学に通う木場さんは、核のリスクが高まっている今、若い世代がすべきこととして、①継承し続けること ②学ぶこと ③NOという勇気を持つこと を挙げて、「平和のために共に頑張っていきましょう」と西遠生へのメッセージを述べてくださいました。西遠生たちは、同世代の木場さんの言葉をどう受け止めたでしょうか。木場さん、メッセージをお送りくださり、ありがとうございました。
次は、西遠生が平和への決意を述べる番です。「私たちの平和宣言」を中高生徒会長が読み上げました。

平和宣言
一. 動員学徒として亡くなられた29名の先輩方と1名の引率教員の御霊を悼み、殉難学徒慰霊式を今後も継承していきます。
一. 当たり前ではない平和なひと時に感謝し、かけがえのない毎日を大切に生活します 。
一. 過去を忘れることなく、学びとし、より良い時代を築いていく一員となります。
一. 日本だけでなく、世界情勢にも視野を広げ、グローバルシチズンシップを身につけます。
一. 世界平和の到来を信じ、争いを世界から根絶していく意志をしっかり言葉と行動にできる人として、私たち浜松の若い力が小さな努力を続けていきます。
木場さんの想いを受け止め、中高生徒会長が文章を練って作り上げたこの平和宣言は、今日から1年間全校生徒の行動の指針です。
「平和の作文」朗読では、代表生徒3名が作文を朗読しました。
中学1年生が「本当の平和とは」「本当の幸せとは」を深く考えたことを述べ、高校1年生は岩波ブックレット「非核芸術案内 核はどう描かれてきたか」(岡村幸宣 著)を読んで考えたことをまとめました。そして、高校2年生が「ユダヤの星を背負いて」(コルデリア エドヴァルドソン昨)を読んで「人間はどこまで人間でいられるのか」という究極の問いを深く考え、まとめました。歴史に向かい合う姿勢の真摯さに心打たれました。

今回の慰霊式には、毎年6月18日に行われている「浜松市戦災死者慰霊祭」の準備・運営に尽力されている飯田末夫様と小野田康弘様がご参列くださいました。ありがとうございました。
また、テレビ・新聞の取材も行われ、このうち、静岡第一テレビは本日夕方のニュースで慰霊式の内容を放送してくださいました。その内容がYouTubeに上がっていますので、紹介いたします。
静岡朝日テレビでは16日(金)「とびっきり静岡」にて今日のことを詳しく報じてくださるとのことですので、ぜひ皆様ご覧ください。
慰霊式の後、プランターの花は学園各所に運ばれ、正門前も花の道になっていました。たくさんのお花を、西遠前を通られた時にご覧いただけたら、そして平和を継承しようという気持ちにつながっていただけたら、こんなに嬉しいことはありません。
高校生徒会では、公式ブログにて、今日の慰霊式のご報告とお礼を綴りましたので、どうぞこちらもご覧くださいませ。
西遠女子学園は、これからも「平和」の継承に努めます。