古い建物を残すということ

昨夜は、オリンピックの番組の合間を縫って、
Eテレで放送された「コノマチ☆リサーチ」を録画再生しました。
わが町≪中野町≫が登場するとあって、たった10分の番組ではありますが、ドキドキワクワク。
何と、冒頭でハジメ(人間の主人公。お兄さん)とズビ(なぜか宇宙人)の後ろに広がる景色からして、すでに、いつも見慣れているわが町じゃありませんか。
わお、全編中野町ロケ??
…ちがいました(笑)。
しかし、子どもたちに説明している「建ちく士の堀内さん」と字幕が出たオジサンこそ、「中野町を考える会」の支柱的存在であり、中ノ町小学校時代の同級生の堀内君でありました。
すごい、堀内君、ちゃんと自然な演技してる!
「古い建物を保存する」ということについて、堀内君が小学生たちに説明をします。
中野町の伊豆石のお蔵、中区の鴨江別館などが登場しました。
ハジメお兄さんもズビと一緒に、古い建物をなぜ残すのかを考えます。
建物の保存に力を尽くす浜松の人たちが登場し、
建物には使っていた人々の思いや歴史があること、
古い建物はただそこにあるだけではなく、使っていくことに意義があることなど、
小学3年生に語りかける内容でした。
10分間の番組を視聴しながら、いつしか、画面に出てくる中野町の風景だけでなく、私が出会ってきた様々な「古い建物」へ、思いが飛んでいっていました。
80年近い歴史を持つ我が家(母屋)は、2階建て部分を取り壊して新たな建物になりましたが、取り壊す前には浜松市の雑誌の取材を受けたこともありました。
古いトイレは、谷崎純一郎の「陰翳礼讃」の世界そのものでした。
高校時代に稔先生の現代文で「陰翳礼讃」を教わった時には、自分の家のトイレを思い浮かべながらノートをとっていましたっけ。
古いことは使いにくいこと、暗いことは怖いこと…そう思っていたけれど、古い家の新たな魅力、古いことへの新たな視点というものを発見したのがこの時だったように思います。


私の好きな明治村。
古い建物が点在し、明治という時代を私たちに伝えてくれます。
移築されたものではありますが、
こわすのではなく「残す」ことで、当時の建築の技術や人々が育んでいた文化を知ることが出来ます。
見せるだけでなく、ドラマのロケや演奏会などに「使う」ことで、その建物に親しみがわきます。
そうした明治村の姿勢というものは、このEテレの番組ともつながっていますね。

西遠の静思堂。
戦前には「修身堂」という名で、富郎先生が様々なお話をしていた建物です。
戦後、ここは、後ろの書庫と共に「図書館」となっていました。
私の時代は、「修身堂」とも「静思堂」とも呼ばれず、ひたすら「図書館の前の方」だったわけです。
しかし、この風情ある青い屋根の「図書館」の姿は、私学であり女子校である西遠を象徴するような佇まいでした。
やがて、私が大学に通っている頃、新しい図書館が静思堂の後ろに建ちました。
教育実習生として母校に戻った時に、「すごい!図書館が新しくなってる!」と思ったものです。
図書館としての役割を終えた静思堂は、西遠の歴史や倫理・哲学を学ぶ場となりました。
100周年グラウンドの建設に伴い、場所を少しだけ東にずらして、今の静思堂は建っています。
古い建物を壊すのではなく、継承すること。
たくさんの卒業生の心も、この建物が後輩たちに伝えてくれます。

Eテレのおかげで、古い建物を残すということについて、いろいろ考えさせられました。
皆さんの近くに古い建物はありますか?
その建物があるということの意義を、ぜひ考えてみてください。