小さな白板2023 第9週

卒業式という大きな大きな式典を週末に迎えた第9週の「小さな白板(ホワイトボード)」。2月27日~3月5日までの一週間(フル稼働7枚!)をご紹介します。一週間前がまだ2月だったなんて信じられない!と改めてびっくりするような怒涛の一週間でした。

2月27日(月)
  再会をよろこびとなす遺伝子をひとはみな持ち生まれてくるか   富田睦子

この日から高校3年生の再登校が始まりました。卒業式までの一週間、最終週の登校です。久しぶりに会う友達、先輩、後輩、…「再会」の「よろこび」を分かち合う姿が、この日の学園にも多々見られました。

2月28日(火)
  ぼくだけになぜ教えたのか卒業前カーペンターズが大好きなこと   村上秀

卒業前って、「もう逢えなくなる」という焦りもあって心が揺れ動き、思いあぐねて謎めいた告白もしてしまうものかもしれません。カーペンターズは、私が高校生の頃とても人気のあった兄妹デュオ。そういえば、私の初恋の高校球児もカーペンターズのこと話していたなあ、と心は10代に飛んでしまいました。

3月1日(水)
 書き順を守れば「卒業」二文字にハネ、オレはなく書き終わるなり  
千葉聡

3月最初の短歌は千葉聡先生(おっと、2月最初の白板も、ちばさと先生でした!)学校生活の四季を詠まれるちばさと先生だから、どうしても学校行事の節目を歌った短歌に共感してしまいます。「卒業」という字をこんなにじっくり考えることはなかったなあと思いながら、ハネもオレもない純粋さを「卒業」二文字に感じ、改めて3月という季節を噛みしめた一首でした。

3月2日(木)
 さんしゅゆの花くすくすと青空に黄色い春がまたやってきた  佐藤弓生

恥ずかしながら「さんしゅゆ」という花の名を覚えたのはつい最近です。さんしゅゆは、「山茱萸」と書きます。
黄色い小さな花が高い木にいっぱい咲いているのを見て、初めて名前を知りました。
手持ちの写真がないので、無料素材のサイトから、山茱萸の花のお写真いただきました。青空に黄色い色が映えますね。くすくすと、という言葉がぴったりな花だと思います。

3月3日(金) 創立記念日
  咲き初めて笑いこらえているごときハクモクレンを見つつ歩めり   なみの亜子

春の花が「くすくすと」とか「笑いこらえている」ごとく見える、というのは、咲く喜びを全身に感じさせるからかしら。二日続けて花の短歌を掲載したのは、学園にハクモクレンの花が咲き始めたのを前日に見つけたからです。南グラウンドの蛇腹の脇にあるハクモクレンの木。今年は本当にたくさんの蕾がついたのです。発見した時にはとても嬉しくて、思わずこの短歌を翌日用に用意したのでした。登校する生徒たちの視界に、このハクモクレンは入っているでしょうか。

3月4日(土) 
  空は月を月は想いを生み出して私にも春、あなたにも春   カン・ハン

空は月を生み出して、月は想いを生み出して、と何かが始まる連鎖の中で、私にもあなたにも春が到来する、という、春の喜び、高揚感が素敵だなと思います。カン・ハンナさんの柔らかい声が一緒に聞こえてくるような歌です。明日の卒業式は別れだけれど、これから始まる「春」でもあるな、と思いました。

3月5日(日) 第75回卒業証書授与式
 進化する私を見てて卒業は終わりだけれどはじまりだから  江嶋綾恵梨

卒業式当日の白板は、卒業する側に立っての短歌を選びました。 「アイドル歌会公式歌集1」の中の一首です。 作者の江嶋さんは、「26時のマスカレイド」の元メンバーとのこと。ご自身もグループからの「卒業」を経験したからこその歌なのですね。

昨日は卒業式の後、雨の中ではありましたが、卒業生やそのご家族の皆様とお話ができ、とても温かい気持ちになりました。合格の報も聞き、とても幸せな気持ちにもなりました。第75回卒業生の「進化」を、私たちもまた信じて応援しています。

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※本日3月6日(月)、西遠女子学園は、昨日の卒業式の代休日となっております。