PTA総会&小さな白板2023 第14週

図書館入り口の「小さな白板(ホワイトボード)」、4月17日~22日を振り返りながら、PTA総会の日にお話した内容にも最後に触れたいと思います。

4月17日(月)
トーストに蜂蜜を塗る単純にまず食べそしてそれから生きる    三枝昂之

食べることは生きる基本とも言われます。作者の「単純にまず食べ」るという宣誓のような表現に、作者が背負っているであろうものを想像しました。甘い蜂蜜をトーストに塗って、それをほおばり、体にエネルギーを注入して、さあ、そこから「生きる」のだと言い聞かせるような歌です。 いろんな悩みや悲しみ、苦しみを抱えながらも、人は生きていかなくてはなりません。 悲しくてもお腹はすきます。人は、悲しみや苦しみの中でも、空腹という現象に、自分の体内にある「生きる」ことへの渇望を自覚するのかもしれません。食べて、それから生きましょう。

4月18日(火)
二歳には二歳サイズの悲しみがあって火が点いたように泣いている 白竜千恵子

小さい子が泣き出すと、ちょっとやそっとじゃ泣きやみません。それを「二歳サイズの悲しみ」があるのだろうと捉える作者。幼児は、自分の年齢のサイズの悲しみを感じていて、だからこそ、大きな声で火が点いたように泣いているのです。ふと思いました。その年齢のサイズで泣くとしたら、60代サイズの悲しみはどんななんだろう、と。声をあげて泣くことはだんだんと少なくなるけれど、もっと深い悲しみや複雑な涙があって、年齢相応の悲しみのサイズがあるのだろうなあ、と考えさせられた短歌でした。 朝日歌壇2023年1月22日に掲載された作品です。

4月19日(水)
ノジスミレアカネスミレにヒゴスミレスミレづくしの友の庭なり  徳丸征子

朝日歌壇2023年4月9日掲載の短歌です。カタカナだらけの暗号みたいな短歌に面食らいましたが、一字一字読んでいくと、そこには菫の花咲き乱れる花壇のある世界が広がっていました。スミレは山野草、小さな花です。そんな小さなスミレがたくさん咲いた庭。庭を守る「友」とは、どんなに心優しく温かいお人柄なのでしょう。その友を持つ作者の幸福を想いました。
  ※下の写真は、西遠で見つけたスミレたちです。

4月20日(木)
噴水の伸びきっているその先の白い翼が消え去るまえに    加藤治郎

初夏のような暑さが浜松にも到来しました。噴水の水が勢いよく噴き上がっている、その先端に「白い翼」が見えるんですね。その「白い翼」が消えてしまう前に、作者は何をしたいのだろう?何を願ったのでしょう?

4月21日(金)
何時まで放課後だろう 春の夜の水田(みずた)に揺れるジャスコの灯り   笹公人

田んぼに早くも水が張られ、その水面に遠くジャスコの灯りが映っているのでしょう。いつの間にか暗くなっている時間帯。放課後と夜の境目はどこにあるのでしょうね。

4月22日(土)
世間には困難なことも、理不尽なことも山ほどある。しかし、女子校での最適な予習が世界に出た時の女性の第一歩を後押しする。ここでの成功体験が、自信が、女性の力となるのだ。   豊田浩子

おとといのブログで話題にした静岡新聞「窓辺」からの抜粋です。筆者は、袋井商工会議所会頭で、西遠の卒業生である豊田浩子さん。「女子校のススメ」と題されたこのコラムを、私は、昨日のPTA総会の後の「学園PTA」で紹介しました。

困難なこと・理不尽なことに立ち向かうための「最適な予習」が女子校でできるのだと豊田さんは説きます。「最適な予習」という言葉が心に響きました。壇上でこのコラムを紹介した後、何人かの保護者の方から、「私も新聞でこのコラムを読んで感動しました」というお声を掛けていただきました。

昨日は、「西遠の教育方針」について保護者の皆様にお話させていただきましたが、その中で、前週15日の全校講堂朝会で話したこと、それに対する生徒の感想を紹介しました。

  • 今回は最初に生徒総会のお話を聞きました。確かに私が初めて生徒総会に参加したときよりも、活気に満ちた生徒総会に変化しているような気がします。まだ寝ている人や下をむいている人がちらほらいるのは確かですが、前よりも集中して話を聞いている人が増えたような気がします。私自身も中学生のときよりも生徒会員の一人であるという自覚を持って生徒総会や役員認証式に臨むことができているように思えます。高校の生徒総会は活気に満ち、積極的な質問をする姿勢が見受けられます。西遠の生徒であるという自覚を持った先輩方、同学年、そして後輩からも学ぶことがたくさんあるなあと参加するたびに実感するばかりです。私は人前で発言することが苦手ですが、一度だけ生徒総会で質問をすることができた日がありました。その時は多くの同学年、先輩方も質問していました。その雰囲気に飲まれるかのように質問をすることができたのでとてもうれしかったのを覚えています。このように雰囲気というものはとても大切で、それらは五年生になった私達が作り上げ維持していくものであると思います。五年生になったばかりでまだ上手に雰囲気を作ることは難しいかもしれませんが、精一杯努力していきたいと思います。(高校2年)
  • 生徒総会は昔よりも質疑応答が増えて良くなっているという話がありました。私が中学の時に生徒会執行部で話す側の立場に立ったことがあります。その時の生徒総会では質問が全然でなくて生徒総会を本当にやる意味があるのかなという感じでした。それに比べて西遠の生徒総会は質問がたくさん出てよりよい学校にするためにみんな全力だと思いました。これからも生徒会を中心として会員全員でいい学校にしていけるように頑張っていきたいです。(高校2年)
  • ヤマザキマリさんは1967年に生まれ、17歳で高校を中退し、単身でイタリアに渡りました。17歳で高校を中退し、単身でイタリアに行くというなど、相当な覚悟がないと行動できないと思います。私もいつか海外で勉強や仕事をしたいと思っています。ですが、言語の壁やコミニュケーションの問題を考えてしまうので行動するのは難しいと思っています。現地に行っても誰とも喋れなくて何も得られなかったらどうしようなどの不安があります。私は失敗するのがとても怖いです。できることなら、失敗するだろうなと思うやつはやりたくありません。ですが、講演会のときに西遠生が質問した「10代のうちに何をすればいいですか?」という質問にヤマザキマリさんは「10代のうちに失敗や屈辱を知ったほうがいい」と答えたと聞きました。私はその言葉で色々なことに挑戦して、失敗をしておこうと思いました。学生のうちは失敗したとしても先生や親が手助けをしてくれます。ですが社会人になったら、失敗しても学生の時みたいに大勢の人が手を貸してくれるというわけではありません。自分でなんとかしないといけないということが多くなっていきます。自分でなんとかするためには、学生のうちに失敗をして次に生かしていくということをしなければならないと思います。なので、今のうちに新しいことに挑戦して失敗を経験しておこうと思います。(高校1年)
  • 今回の講堂朝会で一番印象に残った言葉がある。それは、西遠生が問いかけたヤマザキマリさんへの質問と回答だった。私は、本が大好きで小さな頃から色んな本を読んできた。そして本の一番好きなところは、筆者のあとがきだった。筆者はどんな思いでこの作品を書いたのか、筆者の価値観や人物像が垣間見えるのが読んでいて面白い。物を書く人の考えや思考は個人的に好きなので、ふと、先生の言葉が耳に入った。「おばさまばかりの同窓生に混じって、最後に質問コーナーで質問をした生徒がいました。”10代のうちに大切にしたほうがいいことはなんですか?”この質問はとても素晴らしいと思いました。2000日の修行をする中高生のみなさんにとって、とても為になる質問だと思って最初の講堂朝会で話したいと思ったんです。そしてヤマザキマリさんはこう言いました。”石橋をたたきすぎないで。失敗や屈辱、自分の存在を苦しめる存在などを端折らないで。それらは必要なこと。10代でなければ向き合えない、「不幸」なんです”」私は、よく失敗から逃げてしまう癖がある。失敗が怖くて、周りの目を気にしてばかりいた。でも、このお話を聞いて何故こんなに当たり前で大切なことに気づかなかったんだろう、と思った。失敗から逃げていれば当然成長もせずずっと前に進めずにいるだけだ。それでは小学生や中学生の自分と変わりない。私は高校生になることで心機一転の心意気を持っていた。つまり、ここで変わらなければいけないということだ。失敗を恐れず、立ち向かうことで今は不幸かもしれないけど、それは必ず幸せや成長に繋がっていくことを学んだ。私には幸いにも、この学園には親身に向き合ってくれる先生がたくさんいる。失敗しても笑わずに一緒にどうしたら成功するか考えてくれる仲間もいる。私はこの学園であと1000日ほどの修行を失敗を恐れず挑戦する修行にしていきたいと思う。先生もおっしゃっていたが、私はこの言葉をきっと忘れないだろう。(高校1年)

講堂朝会の感想に、こうした力強い決意が満ちていたことを私はとても嬉しく感じています。生徒会執行部の姿勢も、生徒会会員である生徒たち一人一人の決意も、これこそが西遠生である!と言うプライドを感じさせてくれました。

そんな生徒たちに、私たち大人はどう接していくべきでしょうか。石橋の前に、たくさんの補助具を出し、苦労しないようにいろんな助け舟を出して…そんなふうに育てたら、子どもたちは「失敗」「挫折」「屈辱」など味わうことはできないでしょう。西遠の目指す生徒像は 「未来を拓く力を持った女性」 であり、「典雅」「荘重」の校訓にふさわしい「鋼の玉を真綿でくるんだ女性」です。そのことを踏まえ、ご家庭と教職員とがしっかりと手を携え、生徒たちを大きく成長させていかなくてはなりません。

豊田浩子さんの「女子校のススメ」に背中を押され、保護者の皆様の拍手に勇気をいただいた「学園PTA」でした。保護者の皆様、ご参加、そしてご清聴、本当にありがとうございました。どうぞ西遠のこれからの教育方針とその実践に今まで以上のご理解とご協力をお願い致します。