小さな白板2023 第25週

学園全体が大きな悲しみのうちに幕を開けた第25週。後半は定期テストもありました。寄り添える短歌がいいな、と思って白板をしたためました。

7月3日(月)
しやぼんだま虹の皮膜のあやかしに騙されながらかなしみを消す   大竹蓉子

全校放送で黙祷を捧げることから始まった7月でした。「しやぼんだま」は儚(はかな)いものですが、美しい皮膜の輝きに魅せられるものです。

「虹の皮膜のあやかしに騙され」ることで、自分のうちにある悲しみを消してしまう、という歌を白板に書きました。悲しいけれど、海津先生の思い出は一人一人の心に輝いているはずです。

5月の姉妹ウォークで、姉妹班のみんなが楽しそうにシャボン玉飛ばしてたなあ…なんて、思い出していました。船越公園のクレマチスの周りでも、シャボン玉を作ってははしゃぐ生徒たちがたくさんいました。

7月4日(火)
にわか雨降りて見上げる千の眼の千の虹彩それぞれ揺れて  富田睦子

雨上がりの虹を歌うこの短歌は、虹本体ではなく、虹を見上げる人々の瞳を歌っています。大きな虹がかかると、皆、言葉もなくして立ち止まり、空を見上げるものです。その様子が「千の眼の千の虹彩」と歌われました。喜ぶ人、感動する人、孤独を抱える人…、千人もの人が、皆それぞれに思いを持ち、同じ虹を見上げている、そんな雨上がりの都会の光景を思い浮かべました。

7月5日(水)
あけがたに驟雨ふりしが水色の朝顔重さうにひらきてをりぬ  篠 弘

朝顔が咲く季節になりました。 朝顔の花が、いつもよりも少し重そうに咲いている…。明け方の驟雨という試練に耐えた証拠です。夏の朝の光景を頭に思い浮かべることができますね。
「驟雨」は「しゅうう」と読み、にわか雨のことを言います。個人的には、小学6年生の時の担任杉山善秋先生が創刊した学級通信のタイトルとして記憶されています。

7月6日(木)
真夏日の予報の朝の散歩道木陰を犬が動こうとしない  小林冬海

朝日歌壇2022年7月24日に掲載されていた短歌です。気温が上昇し、真夏日の予報は、今年も6月から出ていますね。犬には天気予報のメッセージは届いていないはずですが、本能として暑さを回避しようとするのでしょう。木陰を動こうとしない犬に、困り果てている飼い主さんの姿が、目に浮かぶようです。真夏の犬の散歩、今年も犬を励ましながら歩む飼い主さんたちがたくさんいることでしょう。

7月7日(金)
あはくとも虹は虹なり虹と見る心の先を世界におろす   今野寿美

どんなに淡く薄い虹であっても、虹を見つけた人は心に幸せを感じ、誰かに伝えたくなるものです。虹を見る人の心が大事なのです。虹を見る優しさに満ちた心を世界に向け、よりよい世界を築いていきたいですね。

7月8日(土)
楠の木はこんなにでかくなるのかと、行き止まりかと仰ぐ曇天   五島諭

楠の木(クスノキ)は大きく大きく育つ樹木です。曇り空を見上げながら、楠木の大きさに感嘆(或いは困惑)している作者。汗を拭き拭き、楠木を見上げているんでしょうね。

西遠にもクスノキがあるのをご存じですか? 

毎年、高校2年生の九州研修旅行で、西遠生に被爆体験を聞かせてくださっていた被爆者の和田耕一さん。今は亡き和田さんが、生前西遠を訪れてくださり、被爆クスノキの二世を植樹してくださいました。その木が大きく育っています。

2020年6月17日のブログ 

ローズガーデンを見守るように枝を茂らせているクスノキ。平和の象徴でもあるこのクスノキは、この場所でほっとする木陰を提供してくれていますから、生徒の皆さん、ぜひクスノキに会いに行ってください。