小さな白板2025 第23週

高温多湿の日が続いた週でした。暑かったですね。図書館入り口の「小さな白板(ホワイトボード)」の一週間を振り返ります。

6月16日(月)
はつなつの光とひかり交差してそのなかほどを快速は過ぐ
       齋藤美衣

「はつなつ」のひらがな表記が、ハレーションを起こしたように鮮烈に迫ってきました。まぶしい光とひかりの交差の中を、快速電車が走っていく光景。スピード感もある初夏の短歌です。

6月17日(火)
ドリブルとシューズが床をこする音だけを味方にジャンプするから
       加藤千恵

月曜のテーマが「光」なら、この日のテーマは「音」です。バスケットボールのドリブルのあの音が聞こえてきそうな短歌ですね。バスケット部の皆さん、この短歌、見つけてくれましたか?

6月18日(水)
壊された壁にもたれて見上げれば誰にも消されはしない夏空
       千葉 聡

この日のテーマは「平和」です。浜松大空襲の日、戦争に関する短歌をと思って選びました。ガザやウクライナの破壊された街が目に浮かびます。廃墟のように壊され尽くしたその場所に立って見上げれば、誰にも消されない青空が広がっている。その青空を見る人日の奥にどんな思いが込められているのだろう。人間としての矜持、暴力に屈しない強さ…。負けるものか、という声が聞こえてくるような気がします。
そして、今日6月23日は、沖縄慰霊の日です。

6月19日(木)
たつた今、車の色は空の色のタクシー行けりパン屋さんの前を
       佐藤通雅

「白いぼうし」が小学校の国語の教科書に出ていた時代の人なら、このタクシーのでてくる児童文学をご存じのはず。あまんきみこさんの「車のいろは空のいろ」がモチーフになった短歌ですね。そらいろのタクシーが目の前を走り過ぎたら、私も「あ、松井さん!」と言ってしまうでしょう。

6月20日(金)
キリンの絵指して「キリン」と教えれば「キイン」と応え素晴らしく笑む
       早川志織

お母さんが我が子に物の名前を教えている場面。お子さんはお母さんの口の真似をして、完コピしたつもりで、満面の笑みだったのでしょう。その表情が想像できる、微笑ましい短歌ですね。そんな場面を無数に積み重ねながら、親は子を育てているのです。

6月21日(土)
ふうせんが九つとんでいきましたひきざんはいつもちょっとかなしい
      やまぞえそうすけ

小学校低学年のピュアな感性が大人たちをうならせた短歌。2020年10月4日に朝日歌壇に掲載されたこの短歌は、この年4人の選者が一致して選んだ唯一の短歌だったそうです。山添聡介君は当時小1でした。今は、名前の表記も漢字で、素敵な短歌を応募していますよ。

お知らせ
西遠女子学園、本日6月23日(月)は、代休日となっております。

ご不便をおかけしますが、ご了解ください!