小さな白板 第46週 &令和3年度を終えて その3

昨年4月の始業式の日から、図書館入り口に掲げ続けた「小さな白板(ホワイトボード)」、生徒の皆さんはもちろん、ブログを通じてお読みくださった皆様、1年間、ありがとうございました。一区切りとなる令和3年度終業式の日までの一週間を振り返ります。今週は、ウクライナの人々を襲った悲劇に対し、どう考え、行動したらいいのか、そのヒントを探し続けた一週間でした。中学修了式でお話したことも含めて、今日のブログをまとめます。

月曜から木曜まで、私は、日本のいろいろな大学の学長・総長の出した「声明」を読み、そこにある言葉を切り取って白板にしたためました。このことは、3月18日午後の中学修了式でもお話しました。大学がどんな姿勢を示すのか、 学問を追究する大学という場の人々が「侵攻」「武力」「戦争」についてどんな見解を出しているのか、そこにはたくさんの学びと示唆がありました。

3月14日(月) 
我々には何ができるだろうか。平安を祈ること、侵攻への反対の声をあげること、苦しんでいる人々への支持を表明すること。それは、日常の生活の中で示すことができる抵抗の形である。
                        国際基督教大学 学長 岩切正一郎

「日常の生活の中で示せる抵抗」があるということを、私たちは知っていなくてはならないと思います。他人事だとか、遠い世界のことで私にはできることはない、と諦めてしまうのではなく、自分たちにできる意思表明があるのだと、岩切先生の声明を読んで強く思いました。国際基督教大学(ICU)の学長声明全文は、こちらで読むことができます。

3月15日(火)
私たちは、これまでに多くの戦禍の惨状を目にしてきました。その教訓を活かすことなく、未だに人間の尊厳の保証さえ果たされない現状は、人間社会の未成熟さの露呈に他なりません。
                          上智大学長 曄道佳明

上智大学の曄道(てるみち)学長の言葉には、歴史を学ぶはずの私たちが、過去の戦争の教訓を活かすことができていないことへの悔しさがにじみ出るものでした。「人間社会の未成熟さ」を私たちは認めなくてはなりません。成熟のために何をすればよいのかも考えて実行していくべきなのです。上智大学長のメッセージ全文はこちらです。

3月16日(水)
平和と共生・寛容、尊厳と自由・人権は、尊重され維持されるべき基本的価値である。
                        都留文科大学 学長  藤田英典

私たちが大切にすべきものは何かを指し示す言葉だと思います。 都留文科大学は私の母校です。先輩も友人も後輩も、たくさんの卒業生が教職に就いています。教育に携わる若者を多く育てる大学において、 藤田先生のこの言葉は、原点ともするべき言葉だと思いました。藤田先生の学長メッセージはこちらです。
2020年、藤田英典先生の学長就任を知りました。実は、娘がICU大学に在学中、当時ICUにいらした藤田先生の本が話題になり、テレビや本でそのお考えに触れることがあり、共感していました。その方が私の母校の学長に、と聞き、すごい方が母校にいらしてくださったという思いと共に、娘の母校と自分の母校がつながった縁も感じて、とても嬉しく思いました。今回、こうして声明を読むことができ、再びその考え方に感激し、共感しています。

3月17日(木)
ウクライナは、歴史的にさまざまな民族や国家の狭間の中で翻弄されてきました。『てぶくろ』という絵本は、誰しもが排除されることなく、居場所が与えられながら、共に生きるというウクライナの人々が理想とする社会が描かれていたのではないかと思います。
                         立教大学総長 西原 廉太

この声明を読み、すぐに図書館に「てぶくろ」を借りに行きました。「誰しもが排除されることなく、居場所が与えられながら、共に生きる」をいう説明がぴったりくる絵本でした。それが、ウクライナの人々の理想であるのに、今ウクライナで起きていることはそれと全く逆方向の現実です。この絵本を挙げ、ウクライナという国について考えさせてくださった西原先生のメッセージに心打たれました。全文はこちらをどうぞ。絵本「てぶくろ」についても、もっと詳しく解説してくださっています。

修了式の準備をしている講堂をワイド機能で撮ってみました。この白板と同じ17日の撮影。

18日に行われた中学修了式で、私は義務教育を終えて、ここから自分の意志で学んでいく中学3年生たちに、「今ウクライナで起こっていることは、決して遠い国の出来事ではなく、自分と関わりあることとして受け止めてほしい」と話しました。そして、様々な大学の学長・総長という立場の方々が、今回のロシアのウクライナ侵攻に対し、抗議や反対の声をあげていることを話し、白板では紹介し切れなかった武蔵野大学の西本照真学長の言葉も紹介しました。

暴力によって殺される側に自分自身を置き換えて考えれば、他者の生命を脅かし奪い去る暴力は決して容認することはできません。

                  武蔵野大学 学長  西本照真  (3月1日 西本学長メッセージより)

自分の意志でこれからの道を選んだ中学3年生。彼女たちは3年後には「成人」となります。高校3年間の間に、社会に出るためのたくさんの基礎を作っていかなくてはなりません。そんな彼女たちの心に、こうした学長・総長のメッセージが届きますように。

そして、終業式・終了式の日は、こんな白板となりました。

3月18日(金) 忘るるなかれ 若き日を    安部忠三作詞「我らの母校」より

1年を終える時、西遠女子学園校歌の2番のこの言葉が一番ふさわしいでしょう。今、オミクロン株の感染防止のために、校歌も歌えない式典が行われています。CDで流れた校歌を聞きながら、きっと心の中で歌ってくれたであろうことを願いながら、この言葉を白板に書きました。「忘るるなかれ 若き日を」を全ての生徒たちに贈ります。

昨日撮った学園の春の花たちをどうぞ。

静岡市でも今日桜の開花宣言がありましたね。学園のソメイヨシノも、そのほかの春の花も、美しく開花しています。昨日は撮影日和でした。明日は先生方の会議日です。朝から雨かな…。