小さな白板2022 第7週

図書館入り口に掲げている「小さな白板(ホワイトボード)」、先週はバードウィークにちなんで、白板も鳥特集でした。愛鳥週間は10日~16日。今週月曜16日は「愛鳥週間」最終日。ということで鳥に関連した短歌からスタートしました。

5月16日(月) 生き延びよ身を養ひて技守れキーウバレエ団の白鳥たちよ  春日いづみ

「白鳥」として歌われているのは、キーウのバレリーナたちです。どうか生き延びてほしいと願う気持ちは誰しも同じ。「短歌研究」5月号には、春日さんのこの短歌だけでなく、ウクライナの人々への思い、軍事侵攻への怒りが詰まった短歌がたくさんあり、胸を打つ歌ばかりでした。ペンは剣よりも強し。文学の力を信じたいと思います。

5月17日(火) 
他者に敬意を払うこと。これが平和への道。とりわけ自分よりも弱い者に敬意を払うこと。他者への敬意がないところで「争い」は生まれる。家庭でも、学校でも、職場でも、国家間の舞台でも。
                       入澤崇

龍谷大学の入澤崇学長の言葉です。この言葉に出会い、他者への敬意を払うことを忘れてはいけない、と自分に言い聞かせました。自分より弱い立場の者への敬意を大切にしましょう。私たちがいる家庭でも、学校でも。

5月18日(水)
君たちは若いのだ。狐疑逡巡することなく、自分の目的に向かって、たとえそれが、ジグザグ道でも、たゆみなく歩みつづけて欲しい。     岡本富郎

「黄金の鋲」の中から、岡本富郎先生の言葉を紹介しました。狐疑逡巡(こぎしゅんじゅん)とは、きつねが疑い深いように、なかなか決心がつかず、ぐずぐずしていること。優柔不断なさま。(goo辞書より)という意味です。ジグザグの道でも、たゆまぬ努力を続けよという富郎先生からのメッセージを、生徒の皆さん、どうぞ受け止めてください。

5月19日(木) 
ひとつのたしかな今日があるといい
明日に向かって
歩き慣れた細道が地平へと続き
この今日のうちにすでに明日はひそんでいる   
               谷川俊太郎「明日」より

   明日     谷川俊太郎

ひとつの小さな約束があるといい
明日に向かって
ノートの片隅に書きとめた時と所
そこで出会う古い友達の新しい表情

ひとつの小さな予言があるといい
明日を信じて
テレヴィの画面に現れる雲の渦巻き
〈曇のち晴〉天気予報のつつましい口調

この詩は、「ひとつの小さな…」が各連の冒頭に並びます。「小さな願い」「小さな夢」。そして、「だが明日は明日のままでは/いつまでもひとつの幻/明日は今日になってこそ/生きることができる」と続き、最終連の「ひとつのたしかな今日」を願うところへとたどり着いていくのです。「たしかな今日」があるからこそ、「明日」は始まるのだという谷川さんの詩の力強さ。高校講堂朝会で紹介した「黄金の鋲」の富郎先生の言葉「今日に生きる」にも通じるものがあると思いました。約束も予言も願いも夢も大事にしながら、何もせずに明日を待つのではなく、今をひたむきに生きる…。私たちはそうした姿勢を大切にしなくてはなりませんね。

5月20日(金) 教科書に漱石よりも多く載る中島敦の「山月記」はも   亞川マス子

高校2年生の現代文では、ちょうど今度のテスト範囲に入っているという「山月記」。舞台は中国。主人公の李徴(りちょう)は、詩人となる望みに敗れて虎になってしまった男です。難解な文章、非日常の展開の中に、人間を鋭く見つめる中島敦の研ぎ澄まされた感性を感じます。高2は苦しんでいるかもしれませんが、名作です。(久々に現代文の授業で教えたくなりました。)

この「山月記」をパフォーマンス大会で踊ったクラスがあるのをご存じですか? 2018年度のパフォーマンス大会。クラスは高校3年菊組です。素晴らしいパフォーマンスでした。文学をテーマに創作ダンスを仕上げる「読解力」の深さと「身体的創造性」「表現力」のすごさを見せてくれた作品でした。

5月21日(土) 
興奮している自分がいる。スタートに立つ自由な人間だけが感じる興奮なのだろう。
            映画「ショーシャンクの空に」より

前夜20日(金)の夜、久々に地上波で「ショーシャンクの空に」が放送されました。私の大好きな映画です。地上波だと吹き替えだしCMが入るので興ざめな部分はあるのですが、たくさんの人が見てくれたらいいなあと思ってチャンネルを合わせていました。

「ショーシャンクの空に」は、希望を持つことの大切さを教えてくれる映画だと書かれていて、私はレンタルビデオで初めてこの映画を見たのです(時代が分かりますね)が、ホントにホントに感動しました。その後、家族みんなで観ました。刑務所が舞台だし、主人公が本当に罪を犯したのか無実なのかも映画後半まで判然とせず、暴力的な場面もあるのですが、最後まで見れば、この映画の素晴らしさがすべての人にわかってもらえると思います。

好きな映画だけあって、このブログでも、これまでに2回紹介してますね。
   →2014年 2016年

実は「小さな白板」でも一度この映画のセリフを紹介しています。昨年の4月14日の白板です。

希望はいいものだよ、たぶん最高のものだ。いいものは決して滅びない。
Hope is a good thing, maybe the best of things, and no good thing ever dies.

      映画「ショーシャンクの空」より

この台詞が、主題にも通じ、映画の中の一番の名言でしょう。そして、昨日21日の白板に書いた「興奮している自分がいる」という台詞は、最後の最後にモーガン・フリーマン演じるレッドの語りです。この語りがいいんです。ぜひ地上波で見た皆さんも、見なかった皆さんも、いつか字幕で鑑賞してください。モーガン・フリーマンの語りの渋さをどうぞ堪能してください。

明日から5月定期テストが始まります。生徒の皆さん、テストに狐疑逡巡せず、「たしかな今日」を生き、たゆまず歩んで実力発揮を!