小さな白板2022 第18週

図書館入り口に掲げている「小さな白板」第18週。今週の裏テーマ、生徒の皆さんは気づきましたか? 今週は「食」をテーマに短歌を集めてみました。

9月5日(月) 菜園を始めてからは目と鼻の先に地球が息をしている  柳田孝裕

今年7月3日の朝日歌壇より。野菜を育てることを通して、地球を身近に感じ、大地とつながる感覚。高校生徒会の「菜園」もそろそろ収穫の季節でしょうか? 地球を身近に感じた人が学園にも増えたかもしれません。

9月6日(火) 整然と仕舞われている食器たち料理をのせてみたくないかい  俵万智

実家の食器棚にきれいにしまわれた食器たちに向かって、心の中で語りかけている作者が見えるようです。大事な食器ほど大事に棚に仕舞われますが、一方で「使われてこそ食器」とも言えます。食器たちに「役割」を説いてくすぐる作者の優しい挑発が素敵ですね。

9月7日(水) 食卓の隙間を埋める取り皿の野菊、コスモス、これはアネモネ   toron

今度は食卓を埋める取り皿たちに注目した短歌です。この短歌に出会った途端、私は我が家の小皿たちを思い出しました。

何年前だったか、バスツアーで長浜を訪ねた時に、12か月の花の小皿を「どれにしようか」と悩むうち、12枚全部買ってしまったことがありました。新たに加わった食器たち、どのお皿を誰が使うかはその時の季節感と彩りと気分で選んで使っています。食卓の華やぎは、食材だけでなく、食器も担ってくれるのですね。
このシリーズは、マグカップや湯飲みもあるとのちに知りました。学校では、いただきものの薔薇(左上の柄)のマグカップを使っています。

9月8日(木)  砂糖菓子うすくれなゐに染められて何かを待てり孤悲ならなくに   水原紫苑

薄紅色の砂糖菓子に、作者は「誰かを待っている風情」を感じたのでしょうか。「ならなくに」は文法的に説明すると《断定の助動詞「なり」の未然形+連語「なくに」》ですね(高校生の皆さん分かってましたよね?)。「孤悲ならなくに」の「 孤悲 」は万葉集で「恋」の意味を表す万葉仮名と記憶しています。ひらがなのない時代に、歌で「恋」を「一人」が「悲しい」という漢字で表したのはかなり粋ですよね。現代の歌人水原紫苑さんは、その万葉仮名を使って、「恋でもないのだろうに。」と、砂糖菓子のほんのりとしたうすくれないの色に向き合っています。砂糖菓子も恋をするかもしれないなあ、なんて思いたくなる短歌です。

9月9日(金) 梨、葡萄、蜜柑もなべて「もも!」なれば吾子よ輝へ蒼き夜長を   黒瀬珂瀾

黒瀬さんの短歌には、幼い我が子との日々が読まれているものが多くあります。昨秋この白板で紹介した「猿公(あいあい)と白象(ぱおー)、獅子(がおー)を引き連れて児は眠りゆく森の奥まで」(11月17日)も彼の作品で、生徒から「この歌好きです」と言われたものでした。

秋のおいしい果物全てが「もも」でひとくくりにされてしまう幼い世界。その小さな世界のキラキラを父親も心から感じるのでしょう。秋の夜長に、小さな我が子のけがれなき輝きを感じ、それが短歌になる。

子どもが小さかった時の「言い間違え」や「言い換え」は、きっとどのお宅にもある思い出でしょう。黒瀬さんの短歌は、それぞれのおうちにあるご家族のエピソードをも連想させてくれる、心優しい短歌だと思います。

9月10日(土) お祝いの名目はなくしかし今日なにか明るくエクレアを購う   富田睦子

オープンスクールで来校される皆さんに向けて、明るい短歌を選びました。何かの記念日、誰かの誕生日でない日だって、甘いケーキを買いたくなることはありますね。誰かとケーキを食べたい、という気持ち。心が晴れやかで明るい日。図書館の入り口でこの白板を見つけてくださった方、いらしたらうれしいなあ。エクレアを買いたくなった方もいらしたかもしれませんね。この短歌を書いていたら、私もエクレア、食べたくなりました。今日は私の母の誕生日です。

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【おまけ】テレビの話①

そろそろ最終回が近いドラマの話をします。
朝7:15からBSプレミアムで放映しているかつての朝ドラ「芋たこなんきん」、私は毎朝録画して、寝る前に見ています。主人公花岡町子は作家田辺聖子さんがモデルです。町子役の藤山直美さんは、喜劇王の藤山寛美さんのお嬢さんで、私が大好きな女優さんのお一人です。そして、かもかのおっちゃんを演じる國村隼さんは、この「芋たこなんきん」で大好きになった役者さん。お兄さん役の火野正平さんと3人のシーンは、もう台詞の言い回しと言い、間合いと言い、絶品です。秘書役のいしだあゆみさんの演技も本当に素晴らしい…。最終回が近づいて、毎晩録画を見ては泣き笑いしております。この「芋たこなんきん」、朝ドラとして放映された当時は視聴率が良くなかったそうですが、我が家では大好きだった朝ドラでした。だから「今年4月から再放送」と分かって、私だけなく、東京の娘も大喜びしてました。視聴率という表層の「数字」にとらわれることなく、良質なドラマが増えていくといいなあ、と「芋たこなんきん」を見ながらいつも思っています。

【おまけ】テレビの話②

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」も毎週楽しみにしているオオバです。小栗旬が大好きな私にとっては至福の日曜日を毎週迎えているのですが、鎌倉時代の抗争は本当に熾烈で、次々登場人物が「失脚」させられるわ「暗殺」されるわという衝撃の展開です。それを、飽きさせずに見せる三谷幸喜の脚本は本当に面白い! 描く人物像がどれも魅力的なのです。そろそろ中川大志君演ずる畠山重忠の運命も心配です。歴史上の人物がいつ最期を迎えるのかが年表としてわかっているだけに、そのドラマをどう描くのかが見ごたえ抜群です。大河ドラマを見ると歴史に強くなるので、ぜひ生徒には見てもらいたいんですが、なんでみんな見ないんだろう…。もったいない!

【おまけ】テレビの話③

中秋の名月の昨夜、BSプレミアムでは22時から「ウルトラマン大投票」という番組がありまして、一人ニヤニヤと見ておりました。たくさん怪獣が登場しましたし、懐かしのウルトラマン俳優さんもインタビューで登場しましたので、満月の夜に一人で盛り上がりました。

我が愛するウルトラセブンは第2位でした。1位のウルトラマンティガは、娘や息子と毎週見ていたシリーズです。うんうん納得。ウルトラマンシリーズの歴史は、わが家族の歴史とも重なるなあと感慨深い秋の夜でした。中秋の名月の月より遠いM78星雲のお話です。