小さな白板2023 第46週

図書館入り口の小さな白板(ホワイトボード)。毎朝、新たな短歌を書いて白板を図書館に運ぶ時、中学バレー部の生徒たちがイチョウの黄色い葉を掃き集めてくれていました。そのすごい落ち葉の量! しかし、週末に見上げると、イチョウはすっかり箒(ほうき)のようになっていました。冬の寒さがやってきたのですね。バレー部の皆さんの朝のルーティンも冬バージョンに変わっていくのですね。

12月11日(月)
数学が嫌いだけれどマイナスの二乗がプラスになるの大好き
    藤田敦子

週のはじめは「数学」から。2023年11月12日の朝日歌壇で見つけた短歌です。苦手な分野でも、好きなところってありますよね。マイナス×マイナス=プラス、私も大好きです。皆さんはどんなところが好きですか? そんなちょっとした「好き」が、勉強を前に進める力になるのではないでしょうか。

12月12日(火)
階段を二段跳びして上がりゆく待ち合わせのなき北大路駅
    梅内美華子

北大路駅は、京都の地下鉄の駅です。待ち合わせのない駅の階段、二段飛びする作者の歩みは寂しさとか孤独ではなく、解き放たれた自由な明るさにも思えます。束縛のない時間や自分に高揚感を感じているかのような、若さと清々しさを感じました。
作者は、同志社大学の学生時代にこの短歌を含む第一歌集「「横断歩道(ゼブラ・ゾーン)」で賞を受け、注目された歌人。「短歌タイムカプセル」(書肆侃侃房出版)という本(※現代歌人115人の作品が二十首ずつ掲載された本です)から紹介しました。

12月13日(水)
つかうほど増えてゆくもの かけるほど子が育つもの 答えは言葉
    俵 万智

俵万智さんの最新歌集「アボカドの種」より。「言葉」って、本当にそうですね、使うほど増えていくし、子どもに言葉をかけるほど、子供は育っていきます。だから、私たち大人は、言葉をたくさん使わなくてはいけないと思います。たくさんたくさん言葉をかけて、かけて、そうして子どもたちを育てていきましょう。母親学級の日でしたので、この短歌を選びました。

12月14日(木)
本を抱き書店いでゆくをさなごの背がふつくらと満ち足りてゐる
    古谷智子

今週は「朝の読書週間」でした。8:10~8:25と、いつもより5分長い読書の時間が設けられています。今週は道徳で火曜・水曜と1時間目に中学の教室に行きましたが、SHRのあとも再び本を開いている生徒がたくさんいて、朝の読書の続きの光景を見ることができました。
本を抱いて本屋さんを出ていく小さい子の背中がふっくらしていて、満ち足りているように見える…幸せな光景だなあと思いました。私も近所に本屋さんがあったので、こういう姿をして本屋さんから家に帰った日がたくさんあったのだろうと、幼い頃を懐かしく思ったのでした。

12月15日(金)
ていねいな暮らしに飽きてしまったらプッチンプリンをプッチンせずに
    水野葵似

プッチンプリンは、底の突起をプッチンしてお皿に出して食べるもの。それすらも面倒くさくって、カップのまま、お皿に開けずに食べてしまうこともありますね。そういう時の後ろめたさも、この短歌が吹き飛ばしてくれる感じです。「ていねいな暮らし」を心がけることは大切ですが、飽きたり疲れたりした時には、「プッチンプリンをプッチンせずに」食べることも「あり」だと思います!

12月16日(土)
胸ふかくたたんで閉じる思い出が葡萄の色に澄んでゆくまで
     岸原さや

岸原さやさんの短歌に、あたたかい気持ちになりました。思い出は、いつか時がたつと「葡萄の色」に済んでいく…。だから、今は胸深くにたたんで閉じておくのです。
作者の岸原さんは、2021年7月に「噴水のつぶつぶのようわたしたち落ちてふたたび噴きあがるみず」という短歌を紹介してから、気になっている歌人のお一人で、シルビアさんという気品あふれる猫さんも登場する旧ツイッターの岸原さんの呟きを楽しみにしています。(※白板の写真、18日朝に撮り直しました。)

☆  ☆  ☆

落葉が進んだ学園。12月1日→12月16日のナンキンハゼの落葉状況をどうぞ。

落葉したナンキンハゼの手前で、黄色い葉を見せているのはロウバイです。近づいてみると、ロウバイのつぼみも膨らんでいます。紅葉の季節から、冬の花の季節へと、季節は確実に進んでいますね。