小さな白板 第25週

図書館入り口の「小さな白板(ホワイトボード)」第25週は、10代の短歌を特集しました。イメージ写真も一緒に、ご紹介します。

10月18日(月)  「せんせい」と子どもに足をつかまれて夢に近づく保育実習
            高濱麻衣子(香寺高校2年) 東洋大学編「青春みそひと白書」より

保育実習に臨んで、まとわりつく子どもたちに戸惑いながらも嬉しい気持ちで頑張る高校生の姿が目に浮かびます。西遠にも、蒲幼稚園の園児の皆さんとの触れ合いの日があります。コロナウイルスの感染防止のため、現在は中断していますが、幼稚園の先生のお仕事をお手伝いしてみて、その大変さに気づく生徒や、ちびっこパワーに翻弄される生徒もいます。そして、この短歌のように、将来のあこがれの職業目指してこの体験を楽しみにしている人もいるでしょう。夢の入り口にいる高校生たち、その苦労も困難も全部夢の中に入れて頑張ってほしいです!

10月19日(火)  だけれども不満がないのもまた不満自由なことは退屈なのだ
             山中正和(津山東高校1年)東洋大学編「青春みそひと白書」より

自由の退屈さって確かにあるかもしれませんね。大人社会への反抗こそが若さのエネルギーであって、反発や抵抗の必要のない自由な中にいることは、もしかしたら違和感があって、息苦しいのかもしれません。恵まれてると言われる10代の偽らざる本音。

10月20日(水) 月がキレイ思い切って言ったけど理系のキミには伝わらないか
  県立尾道北高等学校一年 土井裕未(県民文化祭ひろしま’19 広島市教育委員会賞受賞作)

20日は満月だったので、この短歌を選びました。夏目漱石がかつて、I love you.を「月がきれいですね」と訳させたという逸話を、作者は思い切って実践したけれど、理系男子には本意は伝わらなかったみたい、と。若いっていいなあ! 

ちなみに、漱石と言えば思い出すのが、西遠で英語を教わった、今は亡き岩井巌先生です。いい言葉に出会うと僕は書き留めているんです、と言って、ある時、夏目漱石の「三四郎」から「可哀想ってことは惚れたってことよ」(←ちょっと不正確かもしれないですが、岩井先生の言い回しがこうだった。)という言葉を紹介してくれたのでした。英語は苦手だったけど、岩井先生は大好きでした!

10月21日(木) 長崎の小さな土鈴を手で振りて病気の祖母に旅を語りぬ
            小川裕子(小川高校2年)東洋大学編「青春みそひと白書」より

修学旅行のお土産を病床のおばあさまに届けた作者。この短歌を読んだ時、この短歌の女の子は私だ!と思いました。自分自身の高2の研修旅行、京都から九州まで5泊6日の大旅行でした。長崎ではなく、京都で私は祖母に土鈴を買いました。旅行翌日の代休日に、一人バスに乗って、医療センターに入院中の祖母を見舞い、土鈴を渡しました。それが祖母との最後のひとときになるとはつゆも思わず、エレベーターホールまで送ってくれた祖母と別れました。短い間だったけれど、土鈴は祖母の病室に飾ってもらえました。

10月22日(金)  雨に濡れ平和を願う祈念像あの日と同じ空を指さす
   馬屋原 朋季 (岡山・井原高校 南校地3年)全国高校生創作コンテスト2020短歌の部佳作

来週はいよいよ九州研修旅行です。今年は高校2年生に加え、高校1年生も九州に行きます。コロナウイルス蔓延の昨年、オーストラリア研修に行けなかった高校1年生は、今年1年遅れで訪豪の予定でしたが、今年も海外研修はかなわず、高校2年の研修旅行の九州へ1年前倒しで行くことになったのです。

九州研修旅行は、福岡・佐賀・長崎の3件を訪ねる3泊4日の旅です。元気に言ってきてほしいという思いと、平和について深く考えてきてほしいという願いがあります。長崎の地で、どんなことを学び、どんなことに気づいたのか、高校1年生も2年生も、一回り大きくなって帰ってきてほしいと思います。

さて、その九州で西遠生が長くお世話になった 被爆の語り部 和田耕一さんが今年7月に亡くなられたことを知りました。7月6日に94歳でお亡くなりになったということです。(新聞記事は、こちらからお読みください。)

10月になるまでご逝去を存じ上げず、申し訳ない気持ちでいっぱいです。和田さんに原爆の恐ろしさを語っていただき、平和の尊さを心に刻んだ卒業生が、西遠にはたくさんいます。和田さん、今まで長い間、本当にありがとうございました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。