図書館入り口に掲げた「小さな白板(ホワイトボード)」、10月20日から24日の5日間を振り返ります。
10月20日(月)
餌台から四十雀がこぼす餌(え)を雀食み雀の去れば鳩がついばむ
米川千嘉子

作者のおうちの餌台には、様々な鳥が来るのですね。シジュウカラ→スズメ→ハト。じっと観察したくなります。学校へのシジュウカラの飛来が多い季節、そして中学1年生が鈴木俊貴さんの説明文でシジュウカラに出会ったところなので、この短歌を掲載しました。
そうそう、皆さんにお勧めしている鈴木俊貴さんの著書『僕には鳥の言葉がわかる』が、書店員が選ぶノンフィクション大賞2025に選ばれたそうです! もうすぐ読書週間、この本を手に取ってくれる生徒がいると嬉しいです。


10月21日(火)
金色の祭りのひと日青みゆき足元からくる秋の夕風
松村明徳

いつまでも暑い日が続き、なかなかこの短歌を紹介できないなあと思って、ストックしておいた短歌です。秋祭りのお祭りの喧騒の中で、一人、季節と色を感じている、そんな静かさがいいなと思って紹介しました。静かに静かにやってくる秋。季節の移り変わりを五感で感じたいですね。
10月22日(水)
ホルンの音はいつもぎんいろ 祈るならこんな声してもの言いたいが
川上まなみ

川上まなみさんの短歌を紹介するのは、今回で3回目です。
すべての音をひとつの場所に向かわせて指揮の手が風となる十分
この場所で立って待つことしかないことも悦びとして樹のようなわたし
吹奏楽の顧問である作者の、教師としての目線が感じられて、彼女の短歌に共感することが多いです。
ホルンの音色、皆さんはどんな色として受け止めますか?
10月23日(木)
犬はいつもはつらつとしてよろこびにからだふるはす凄き生きもの
奥村晃作

犬は全てわかっている、とある方が言った言葉にいたく共感しました。犬は人間なんかより上を行っている、犬にはかなわない、と私も兼ねてから思っています。はつらつとして喜びに全身を震わせている犬に、元気や幸福感をもらっている人間たち。「かわいい」だけでは済まされない、「凄き生きもの」なんですね。ずっと以前に買っていた犬が、命の瀬戸際で、もう動けなくなっているのに「さんぽ」のひとことを聞いただけで尻尾をちぎれんばかりに振ったことを、今も涙とともに思い出します。犬のうれしさの中には、相手を喜ばせる思いやりが詰まっているように思うのは、私だけでしょうか。
10月24日(金)
指先が生み出す音色 まだ会ってない朝の陽が世界中にある
坊 真由美

秋休み、坊真由美さんから、歌集「へしゃげトマト」をご寄贈いただきました。坊さん、ありがとうございます(お礼のお手紙より先にブログに紹介してしまいました!)。
坊さんとの出会いは、私が朝日歌壇で見つけた一つの短歌でした。おととし9月に白板に書いた
夏過ぎて犬が布団に飛び入った今日が私の秋の始まり
という坊さんの短歌です。この後、坊さんがツイッターで「西遠女子学園の校長先生、歌を紹介していただいて嬉しいです。「学校で掲示されたなんて、ボウ(犬)も天国できっと喜んでます。今年の秋は2代目の子犬が、10月2日に始めてくれました🍁」と書いてくださいました。
2代目ワンちゃんは、今年、いつお布団に飛び入ったでしょう。今年は暑かったから遅かったじゃないかな、など、坊さんの短歌を思い出すこの季節。
この度いただいた歌集には、天国に行ってしまったボウちゃんの短歌もたくさん掲載されています。歌集の最後の一種が、「夏過ぎて」の短歌でした。
悲しい歌、苦しい記憶を歌った歌も多い中で、この日「小さな白板」に取り上げたのは、音楽と朝の希望や可能性が感じられて、彩りを感じた一首です。
まだ会ってない朝の陽に、いつか出会えると信じて、歩んでいきたいなと思います。

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10月24日には、学習塾の皆様への入試説明会を実施いたしました。お忙しい中ご来校くださいました皆様に心より感謝申し上げます。


