小さな白板2022 第16週 (最後にニュースあり)

図書館入り口に掲げた「小さな白板(ホワイトボード)」、海の日翌日の7月19日から5日間を振り返ります。

7月10日(火)  後ろ手を組むがごとくに羽を背にたたみし鴉いま歩きゆく    花山多佳子

カラスの歩き方を見ていると、本当に手を後ろに組んで歩いている人間のような感じがします。テスト中に机間巡視をする先生みたいでもありますね。この短歌に出会ったとき、ちょっといばりん坊のカラスになんだか親近感が湧きました。

7月20日(水)  あふりかの医師ムクウェゲを思ふときはつか目に見ゆ木槿の花は   寺井龍哉

2018年にノーベル平和賞に輝いたデニ・ムクウェゲ氏はコンゴ民主共和国の産婦人科医で、性暴力被害者の治療と支援にあたっています。彼の名前のムクウェゲから、作者は木槿(むくげ)という花の名を連想し、ほのかにムクゲの花が目に浮かぶのでしょう。夏に咲く力強いこムクゲの花。女性たちの命と尊厳を守るために活躍する医師にふさわしい、毅然とした花のように思います。写真は、浜松駅南口に咲いていたムクゲです。

7月21日(木)  戦争がやさしい雨に変わったらあなたのそばで爪を切りたい  笹井宏之

この日、西遠では「平和」について考える授業の取材を受けました。(詳細は放送日近くになりましたらお知らせいたします。しばしお待ちを。)「戦争」「平和」を扱った短歌はあまたあります。その中で、優しい気持ちになれそうな、笹井宏之さんの一首を紹介しました。笹井さんは、2009年に26歳で夭折。やわらかで繊細な短歌をたくさん遺した歌人です。

7月22日(金) 
 猫の手が飛びつき緩むノブの螺子(ネジ) 締めて終はらす今日の一日を     内藤明

22→ニャンニャンってことで、猫の短歌を一つ紹介しました。猫が飛びついてねじがゆるんでしまったドアノブ。その螺子(ねじ)を締めることで、今日という一日の仕事が終わるのでしょう。猫との生活、あこがれます。写真のネコは数か月我が家にいて行方不明になったジグルです。

7月23日(土)  ドードーの最後の一羽死ぬように岩波ホール閉館となる   松村由利子

岩波ホールを知っていますか? 東京で数々の名画を上映してきた岩波ホールが、この夏閉館するというニュースは、多くの文化人、映画ファンに衝撃を与えました。コロナ禍の中で、次々に閉まっていく劇場や映画館、スタジオ…。7月29日に閉館予定というこのホールを、絶滅したドードーと結び付けたこの短歌は、とても哀切で、私に、失くしちゃいけないものを失くしていく人間の愚かさにも通じるような苦しさを感じさせました。

明日は夏休み前の授業納めの日です。図書館開館の日は、夏休み中も、この白板を続けたいなと思っています。

【ニュース】百人一首部、近江神宮での第44回全国高等学校かるた選手権大会で2名が初段獲得しました
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